第214話 初めて見ました

 大雪で車がまともに動かない。

 田舎は車が無いと生活が成り立たなくなるのだ。

 雪に埋もれた車を道路に出すだけで1時間以上かかる。

 道路に出ても車はハマる。

 駐車場に戻すまでに、また除雪しなければならない。


 空回りするタイヤから煙があがった…

 ゴムが溶けているのだ。

 車の底は氷の塊にぶつかる。


 そんな日が3日も続いた…

 ウォッシャータンクが割れたはずだ。

 タイヤがすり減ったはずだ。


 そんなわけで車屋に持って行った。

「タンクが割れてるはずなんで、上げて見てもらえますか?」


 ピット作業に入り待つこと30分

「桜雪さん、タンク駄々洩れでした」

「えぇ…そうでしょうね」

「それ以上に、タイヤが…いや~初めて見たんですけど、こんな風に減ったタイヤ」

「でしょうね…」


 タイヤのど真ん中に深い溝が一直線に入っている。

「何をしたら、こうなるんですか?」

「ん? 砂利道でスタックしてタイヤが空回りしたときに大きく尖った石があったのではないかと…」

「いやぁ…凄いですよ、こんなの初めてです、タンクの駄々洩れより、コッチにばっかり目が行っちゃってハハハ」

(ハハハじゃねぇよ…)


 見積もり待ちになりました。

 2万は覚悟してます。

 にしても…プロが笑うタイヤの減り方…雪いいことない。

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