第199話 女の感
『彼女さん』引っ越しを考えているようだ。
まだ日は決まってないけど手伝ってと連絡があった。
急に言い出しそうだから2週間前には言ってねと頼んでおいた。
サラリーマンは休むにも申請が必要なのだ。
週末のバイトも、なかなか人不足で休みにくい状況。
休めないまま夏が終わってしまった。
いったい何をしているのだろう?
疲れた…
仕事、眠って仕事…本当に、その繰り返し、気づけば何も考えない日が続いていた。
「空っぽなんだな~」
ただ目の前にある仕事を熟すだけ、それ以外の何かを考えることすら止めていた。
不謹慎ながら、訃報を羨ましいと思っていた。
「死ねたんだ…羨ましいな…」
今日もバイトを終えて、軽い頭痛を抱えたまま、ソファで浅く不快な重い痛みから逃げるように眠ってしまっていた。
スマホが鳴る。
正直、スマホの音はストレスなのだ。
気持ちがザワザワして鼓動が早くなる。
『彼女さん』だった。
「どうしたの?」
僕が電話に出ると
「ん? なんかあった?」
「何もないよ」
「……なんかあったよ」
「何もないよ、どうして?」
「女の感だよ、なんかあったような気がしたんだよ、よく考えて、最近なんかあったんじゃない?」
「女の感って…アテにならないな…」
彼女のスマホの向こうからガサゴソ…ガサゴソ音がする。
(何をしてるんだか…)
「何もないならいいけど」
起きあがれば軽い頭痛だけが残る。
「何もないか…」
きっと何もないという状況が『彼女さん』の感では、何かあった?ということなのかもしれない。
女の感ね…あるのかもな。
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