第171話 採血

「桜雪さん、では10日に内視鏡検査で…」

「はい…」

「念のため、今日は採血だけしますので」

「はい…」


 10年以上、健康診断で引っかかるマイストマック…胃

 送られきたCDに記録された、マイストマック…胃

(ブロークン、マイストマック…)

「あ~コレだね…このヒダで引っかかったんだね」

「コレですね…この火山みたいなの」

「そうそう…コレね、まっカメラ飲めば、解るから」

「飲まないと解らないと?」

「そうだね、潰瘍の痕かもしれないしね」


 そんなわけで胃カメラを飲むことになったのだ。

 なぜ金を払って、苦しい思いをして、安心を買わなければならないのか?

 知らなきゃ何ともないんじゃないか?

 苦しくなければ、知らないまま死んだほうが幸せかもしれない。


「はいじゃあ袖あげてください」

「はい…」

 そして血を抜かれるわけだ。

「はい、終わりです、そのまま押さえていてくださいね」

「はい…」

(1本でいいんだ…2本採らないんだ…)

「はい、じゃあ指どけて…キャッ」

 ゴポンッ…

 血管から血が飛び出る…

(なんだ?)

 採血して…血が溢れる?

 初体験である。

 まぁまぁの血が流れ出る。

「あらあら…ちょっと…どうなってるの?」

 こっちが聞きたい。

「あっ…桜雪さん、シャツ戻して‼」


 シャツを戻すと血が止まった。

 どうやら、シャツが二の腕を圧迫して血が噴き出たようだ。

(3本分以上出たじゃねぇか…)


「桜雪さん…うん、健康診断結果にも書いてあるけど…痩せようか?」

「はい…」


 肥満だから?

 そのせいなの?

 172cm 86Kg

「まぁ…肥満だわな…」


「桜雪さん、最近痩せたとか…ない?」

「いや…だから…肥満だって…ないです、不愉快なくらいに体重増えてます…」

「そう、まぁ潰瘍の痕だと思うよ」


 もう…潰瘍でいいから痩せたい。


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