第167話 踊り食い

「中国って野生動物を食べるのね…やめてほしいわ」

 バイト先のおばちゃん達が昼休みに喋っている。

 女性というのは、会話がポンポン飛ぶ、誰と誰が話しているということもなく、会話の相手もコロコロ変わる。

 男の僕から見ると、忙しいのだ。


 本職でもバイトでもおばさん世代の女性が多いため、効率を求めることは諦めている。

「桜雪さん、中国へは何度か行ってるんでしょ?」

「えぇ…でもコウモリは食べたことありませんよ」

 そんな話をしていると、別のおばちゃんが

「桜雪さん、アレ食べた?魚の踊り食い」

「食べたことありますけど…美味しい不味いじゃないですよね、食堂のあたりまで動いてるの解るし…好んでは食べませんよね」

「生ものって、やっぱり危ないのかしらね~」

 3方向から会話が微妙な接点で繋がりながら進行していく…

(この速度で会話していて、疲れないのだろうか?)

「コウモリの踊り食い」

(なんて言った今?)

 聞き間違いかと思った。

「コウモリは生で食べないわよ。アハハハハ」

「喉で暴れる」


 最初のコウモリと踊り食いが会話の中で混ざったのだ…

(まぁ…なるわな…)

 想像したくねぇな~コウモリの踊り食い…


 女性の会話はケミストリーなのだ。

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