第146話 7万?
4:25分、スマホが鳴る…
誰?
『通』である…
ビス止め真っ最中の僕が出るはずも無い。
定時で工場を出て、コンビニから電話をする。
「なに?」
「なにじゃねぇよ、なんか用か?」
「おう…就職おめでとう」
昨夜、「就職した」とりあえずメールしたのだ。
『そうか新たな船出か送ろう和光同塵』
今朝、メールの返信が入っていた。
うん…46歳…派遣社員から脱却するために足掻いているのに…能力を隠してどうしろと?
中年から経験を引いたら…マイナスだろ!!
「オマエはどうなんだ?」
「俺か…就職するよ、面接受ける…それで聞きたいんだけど…準社員って正社員なの?」
「……本気?」
「えっ?」
「違うよ…オマエ…そういうとこからなの?」
「なに?」
「オマエ、どういうとこ受けようとしてるの?」
「おう、月給7万で~」
「バカ!! そんな仕事…46歳だよ…考えろ」
「なにが、8時間だよ」
「当たり前だろ!!」
「8時間働けば正社員だろ?」
「………バカ…オマエ…8時間で月7万って…2週間くらいしか働かねぇんだろ」
「そうなる?」
「俺はさ、月10万あれば大丈夫」
「大丈夫じゃねぇだろ!!」
働く気がないのだ。
楽な作業を探しているだけ…
「オマエ…家も買えない…車も買えない…これからどうするの?」
「家はいらない、車は5万くらいで買える」
「オマエの家、築何年?」
「さぁな~、まだ住めるけどな~」
数十年前になるが…すでに土壁がひび割れ、外から中が見えていた…ヒビだらけの木と泥で出来た家だった。
水洗トイレにする金が無いからと地区で唯一、水洗化を断り続け、皆様にご迷惑をお掛けして、市役所の人が何か月も説得しに毎日やってくるという、困った家族なのである。
そして爺さん…親父…『通』と3世代住み続け、誰も家を建てられないどころかリフォームも出来ないという筋金入りの怠け者である。
「やっぱあれ? 15万くらい稼がないとダメ?」
「シラネェよ…オマエの家の事だもん」
「どうすっかな…未経験OKでもいいとこ受けようか?」
「バカ…46歳、未経験で取るとこなんかあるかバカ!!」
「俺…相当ヤバイのかな~」
「頭、おかしい人だろ…オマエ…常識を学べ…キチ〇イだよ…」
「俺、頭おかしくもなるわ!! アレコレ言われてさ!!」
「もう…切るわ…てか…用も無いのに電話しないで…イライラするから…オマエがバカ過ぎて…それと、普通のヒトは4:25は勤務中だから…オマエは、ほら10時~15時で働けるとこしか探さないだろうけど…普通は8:00~17:00で探すからさ」
「おう」
コイツ…仮病を引きずり続けて、どこまで行くんだろう…。
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