第130話 えっ?緑がどうした?

 台風が接近しているせいか、真夏のような暑い日だった。

 ラブホの深夜勤務を終え、僕は家に帰る気が起きないまま神社へ向かった。

 あまり人の来ない神社『咲かない華』という別の作品でも書いた神社だ。


 サングラスの年配の男性が犬を連れて歩いている。

 絵に描いたような盲導犬を連れて歩いていた。

 その男性に子供が3人近寄って

「可愛い」

 と犬を、かまい始めた。

(これはいけない)

 そう思った僕は子供たちに

「その犬は特別な犬だから、かまってはいけないよ」

 と話しかけた。

 するとサングラスの男性は

「いいんですよ、少し休もうとしたところなんで、このも子供は好きですから」

 と古びた境内に向かった

 盲導犬は木陰で座り子供に頭や身体を撫でられていた。

「いいんですか?」

 僕が話しかけると

「年寄りの散歩の相手ばかりより、たまには子供と遊ばせてやったほうがね」

「そうですか」

「えぇ…それにしても今日は暑いですね」

「そうですね台風が近づいているせいでしょうか」

「そうでしょうね、TVも観てないから解らないんですが…」

 僕は目が不自由だと映像なんてな…と思った。

 犬が男性の元に帰ってきた。

 子供も何処かへ行ってしまったようだ。

「さて…そろそろ帰ります」

 男性が立ち上がって盲導犬の手綱を掴んだ。

「お気をつけて」

 僕は軽く頭を下げた。

「はい」

 男性も軽く会釈を返してくれた。

「この神社も古くなった…緑の木々に埋もれてしまいそうだ、眩しいくらいの朝は久しぶりです」

 そう言って少し笑った。

「そうですね」

「……………」


(あれ?……緑の木々に?……埋もれそうだ?…眩しい?)


 目…視えてるじゃないか…


 そう男性は盲目では無かった。

 ついでに犬も盲導犬では無かった。


 盲導犬っぽい大人しい犬と眩しいからサングラスをかけていただけの爺さん…。

「紛らわしんだよ!!」

 足腰が悪いためか、リードではなく取っ手のようなモノを付けて散歩していたのだ。


 そんな出会いがあった朝…なんだろう、この損した気分は…。

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