第84話 在るべきもの
昔の彼女さん。
時折、要らないことを大きな声で言う。
下りのエスカレーターに乗っていた、彼女さんは背が高く、前の男の人は背が低い。
彼女さんは、自分よりチビが嫌いだ。
ジィーッと男の人の頭を見下ろしている。
2段高い所にいるし、彼女さんは背が高いのだ。
男の人の頭頂部を指さしながら
「桜雪ちゃん、アタシ思うんだけど、在るべきところに、そこに在る物が無いというのは、とってもおかしなことだと思うよ」
そこそこのボリュームで言い放った。
男の人は禿げていたのだ…。
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