7/6 豚の角煮

角煮が食べたい。

すごく角煮が食べたい。

今すぐにでも角煮が食べたい。


辛子を塗って角煮が食べたい。

上に乗った白髪葱と一緒に角煮が食べたい。

付け合せの素揚げの獅子唐を齧りつつ角煮が食べたい。

角煮のタレの甘辛さと、豚肉の脂身の甘さと、辛子や白髪葱や獅子唐の辛さをを合わせ、口内で協奏曲を奏でたい。

咀嚼のリズムに合わせ、広がる味覚の多楽章。

肉、脂、辛子、白髪葱、獅子唐。

魅力的な演奏者達によって紡がれる旨味の饗宴。休むことなく溢れ出す満足感。

角煮を食べれてよかった。生きていて良かったと思わされる至福の時。


ああ、私は角煮がどうしても食べたい。


角煮だけじゃない。角煮の煮汁も頂きたい。


角煮の煮汁を少しだけご飯にかけて食べたい。

半熟の煮卵があると尚良い。


角煮の煮汁を魚介スープで割って飲みたい。

おろした生姜と大蒜を溶くと美味い。


角煮の煮汁に箸で切った角煮の断面を浸して食べたい。

混ざり合う煮汁と肉汁の耽美な煌き。


角煮の主役は肉だが、煮汁も影の主役だ。

肉も煮汁も両方とも無ければ角煮にはならない。

角煮を食べるのなら、煮汁も味あわなければならない。

角煮を食べるという事は、煮汁も食べるという事。


ああ、角煮が食べたい。

とにかく角煮が食べたい。

角煮よ、お前は何処にいる。角煮よ。

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