7/2 ラーメンの大盛り

『ラーメンっていうのは普通のラーメンがその店の基本なの!』

『丼の許容量、麺の重さ、スープの量、トッピングの種類と載せ方。全部をそのお店の店長さんが計算して作ってるの!』

『だから!ラーメンは一番バランスの取れた普通盛りで頼むのが一番おいしいの!!』

『大盛りはダメ!!丼の大きさが普通盛りと一緒の店はラーメンのバランスが崩れちゃう!!』

『どうしても大盛りを食べたいのなら、ラーメンを二杯頼むべきなの!!!』




久しぶりに巫女が給仕をする居酒屋に来て飲んでいたら、隣の卓の学士らしき男女の集まりから急にラーメン論が聞えてきた。

一人の女性学士が白熱しているようだが、内容は中々興味深い。なるほど確かに。と頷いてしまう説得力がある。

だが、彼女は気付いているのだろうか。

十数名ほどの他の学士達が、全く耳を傾けていない事に。




『替え玉もダメなの!!博多ラーメンみたいなスープが濃くて細麺の店じゃないとスープが一回目で薄くなるの!!』

『それに替え玉が食券の店は不親切なの!!食券機まで買いに行く間にスープが冷めちゃうし、新しく入ってきた人に迷惑かかるの!!』

『どうせカウンターで店員に現金を渡しても頼めるんだから、だったら最初から替え玉は現金だけにするべきなの!!』




なるほどなるほど。一理ある。なるほどなー。

なんだか可哀相なので、私だけでも心の中で相槌を打ってやる。

今日は急に馬刺しが食べたくなったからこの店に来たのだが、なんだかラーメンが食べたくなってきた。

この辺りのラーメン屋はチェーン店だらけなので、市場のほうまで歩くか?




『それにチャーシューが売りの店はチャーシュー丼よりも単品チャーシューをメニューに入れるべきなの!!!』

『わざわざご飯に乗っけなくてもいいの!!!チャーシューだけで食べたいの!!!』

『というか煮卵やメンマも全ての店で単品で頼めるようにするべきなの!!!』

『スープに入れちゃうからバランスが崩れるの!!!別々にすれば崩れないの!!!!』




あー、そうだなそうだな。その通りだなー。

「あ、お会計お願いします。ポイントカードあるので、これで割引を。飴はいいです。」

支払いを済ませ、出口に待機していた巫女からシャンシャンと神楽鈴を鳴らされ、またのお越しをお待ちしていますという言葉と共に丁寧なお辞儀で見送られる。




あの女性、中々見所があるが、周りが見えていないのはまだまだ若い証拠だな。

もっと経験を詰めばいい戦士になるだろう。

その時は私が相手をしてやってもいい。私もラーメンについては 一家言あるからな。


さて、締めにラーメンでも食べに行くか。

ラーメンはバランスの取れた普通盛りか。なるほど、バランス。

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