6/24 第四のラーメン
スープに麺を入れたラーメン
スープと麺を分けたラーメン
スープを無くしたラーメン
現在のラーメンの種類は大きく分けてこの三つである。
それぞれ、
一番目は普通のラーメン
二番目はつけ麺
三番目はまぜそばや油そばや冷やし中華
が該当する。
焼きラーメンや釜玉ラーメンという変り種もある事にはあるが、ラーメンの食べ方としてはこの三つのどれかに属するだろう。
つけ麺やまぜそばが誕生したときは『誰が食べるのだこんな物』と思っていたのだが、誕生してからこれまでに様々な改良が施されて一つのジャンルとして設立するに至っている。
やはり、この国の食に対する探究心は目を見張る物がある。
しかし、ここ数年はラーメン業界に新生児が現れておらず、既存の物を組み合わせるか、わざとバランスを崩壊させて一部分を特化させた物のどちらかしか見る事が無い。
例えば野菜出汁と鶏がら出汁を合わせてどろどろしたスープにするだとか、メンマやチャーシューだけを大盛りにトッピングするだとか、とにかく野菜を大量に盛るだとか、逆にスープと麺だけにするだとか。
今のラーメン業界は過去の遺産を食い潰すのみで、未知の領域にチャレンジする事を怖がっている。
このままではいずれ先細りしてラーメン業界が滅んでしまうことが目に見えている。
そのため、私は上に挙げた三つのラーメンに属さない、全く新しい第四のラーメンを考案する事にした。
争いが停滞した戦場では英雄が産まれる事は無い。
ここで私がラーメン業界に一石を投じる事で、再び戦争を激化させようというのだ。
まず最初に考える重要な部分はスープの使い方だ。
ラーメンの種類はスープの使い方による分類なので、先に挙げた三つの使い方以外のスープの使い方を考案すれば、おのずと第四のラーメンの形も見えてくるはずだ。
まずはそこから考える。
麺と一緒でも無く、麺と別でも無く、スープを使わないのでも無く、どれとも違う全く新しいスープの使い方は
………………無くないか?
待て、待て待て。しっかり考えるんだ。
………………………………やはり、無くないか?
これは中々に難しいな。
そもそもスープを使わないという選択肢は既に使われているのでどうにかしてスープを使う事になるのだが、麺と一緒なのも別々なのも既存にあるとなると、無くないか?
ラザニアのように板状の麺を使ってスープをゼリー状にして間に挟んだ物は麺料理とは思えないし、小籠包のように麺の生地でスープや具を包んで蒸したのも麺料理ではない。
麺はやはり細長い状態になっていないといけない。
太麺や幅広麺はあるが、板状や球体では受け入れられないだろう。同じ理由ですいとんのような形式も難しい。
軽い気持ちで考え出したが、難問すぎた。
なるほどな。
ラーメン業界は今の状態を是としているわけではないが、その解決策が浮かばないので過去の遺産を少しずつ消費する事で食いつないでいるというわけか。
これはこの国の一大事である。
このままゆるやかにラーメン業界が廃れてしまうとなると、国中にラーメン難民が大量に生まれてしまうだろう。
ラーメンを求めるがあまりに仕事を辞める者が続出し経済活動がストップする。そしてラーメン屋は金を落とす客が居なくなるので儲からなくなり潰れてしまう。そしてさらにラーメンを食べる事の出来ない難民が増えると言うロストラーメンスパイラルだ。
なんて事だ。
この未曾有の国の危機にどうして誰も気付いていない?どうして対策を練らない?
まさか自分達には関係がないと思っているのか?
かつて侍と呼ばれた武士達の末裔であるというのに、まるで牙を抜かれた狼だな。
仕方ない。
私だけでもこの危機に対して対策を考えねば。
そして啓蒙せねばなるまい。
貴様らは今この時点で既に危機に瀕しているのだと。
たかがラーメン、されどラーメンだ。
軽く考えているこの国の人間達よ、今こそ立ち上がるんだ。
ラーメン。
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