6/25 餃子丼

ここ数日、家では餃子ばかり食べているので少し飽きてきた。


焼き餃子は勿論のこと、揚げ、蒸し、茹で、スープと調理法を変えながら食べているが、蒸し餃子と茹で餃子とスープ餃子は食感がほぼ同じなので代わり映えがしない。

もちもちとしていて肉汁が溢れる美味い餃子が、これ程までに嫌になるとはな。


一番の問題は味だ。

まずいわけではないが、基本的に同じ味なので飽きがくる。

さらに、毎日ポン酢を使用していると段々と舌が麻痺してくるようで、昨日はポン酢をただの酸っぱい何かとしか感じられなかった。醤油も駄目だ。苦い何かに感じる。


このままでは醤油やポン酢を使った料理が苦痛になってしまいそうなので、少し変わった餃子の食べ方をしてみようと思う。


十年程前に商業ビルの一角にあった怪しい亜細亜系料理の屋台で食べた、餃子丼という食べ方だ。

名前からすると餃子がご飯に乗っているだけだが、そんな簡単な物じゃない。名前からは分からない見た目をしている。

その店は他にも『爆裂カツ丼』や『フォーオブ赤インド』や『羊のサムス』等の名前から味が想像つかない料理ばかりを出していた。

味は良かったので私はよく通っていたが、どんな食べ物か分からないため中々客が入らなくて半年ほどで潰れた。

そのビルの三階が中華街だった上に、エスカレーター前の狭い一角という場所だったのも原因の一つだったのだろう。


餃子丼は簡潔に言えば揚げ餃子の中華飯だ。

キャベツと人参とブロッコリーと唐辛子で塩味の野菜炒めを作り、中華スープでサッと煮込んでから片栗粉で綴じる。

そして平皿にご飯を盛り、上に揚げ餃子を乗せ、そこに野菜あんをかける。

これだけだ。


たったこれだけだが、揚げ餃子の皮があんを吸っていい塩梅に味が付き、ご飯との相性がとても良い。

唐辛子のピリッとしたからさが食欲をそそるし、あんを吸いきれてない部分の揚げ餃子のカリッ食感が良いアクセントになる。

そして餃子とあんかけと両方に野菜を使っているので、中々に健康的だ。


作ってしまえば簡単だと分かるのだが、実はアジア圏の料理の特徴を混ぜ合わせた完成度の高い料理でもある。

恐らくは台湾の料理が原典にあるのだろうが、店で食べた時は東南アジアの香りも感じた。記憶が曖昧だが、米が香り米で炒める時の油も何か香りが付いていたと思う。


きっとあの店主はアジア料理という新しいジャンルの料理を作っていたのではないだろうか。

もう店は無くなってしまったが、その可能性を考えると実に惜しい。

店主は今は何をやっているのだろうか。

出来れば、もう一度あの店主の料理が食べたい。


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