第一四節
その日が、足掛かりになるのは確実であった。
二年目末。
世界においても屈指の、現世界最高レベルの技術を投資した研究所には、多くの若手研究員達が募っていた。彼等は今日この日、コクト達と共に新しい世界への第一歩を築く日となるのだ。
「初めまして、諸君」
大人数の研究員達は、前に居る四人の英雄と、その真ん中にたつ一人の青年へ目線を向けていた。
「君たちは、この島の謎を解く精鋭として此所に集った。今確かに、我々は強大な謎に向けて足を掛ける瞬間にいるのだ」
言葉通り、彼等はここから始まる世界の挑戦の最前線へと出るのだ。
「詳しい話は後ほどするとしよう。であれば、ここで語るべき言葉は一つ」
ならば、寛大に、そして盛大に彼等の門出を祝おう。
ここから始まる物語は、一人一人に意味を持つ物語であると願うかのように。
そして、彼を迎え入れてくれた友のように。
「――ようこそ、ジャパリパークへ!!」
始めるのだ、ここから。
我らの研究を。
……だが、新天地に新しいものを求めると言うことは、後に大きなものを失うという暗示でもあるのだ。
そう、例えそれが、無くしたくない大切なものであったとしても……。
ジャパリパーク、後のサンカイチホーと呼ばれる場所。
そのある山岳の天辺よりジャパリパークを見渡す一人の少女が居た。
いや、それは一人の少女か一匹のフレンズかと称するには迷い、白銀の髪を靡かせながら、悲しそうな面持ちで世界を見ていた。
肌に刺さる冷たい風は、きっと彼女の心情を表していたのだろう。そんな風に乗せるように、さみしげな声を吐き出した。
「……コクト」
次の瞬間……、
――突風と共に彼女の姿は消えていた。
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