第1352話「そのチョコは何で出来ている?(10)」

午後五時のミントジャングル。

回避を続けるアンチマテリアルライフル女子高生が現れた。

ミント女子高生の思いやりは直接体内に働きかけてくるせいか兵器女子高生の耐久性(一般人が想定する高い防御性能を指す言葉。並の毒や武器は無効化される)よりもずっと強い効果を持っていた。足元から伸びてくるミントに捕らわれれば、アンチマテリアルライフル女子高生も眠りに誘われるだろう。思いやり。思いやりなのだ。成長速度だけでなく効能までも強化できるミント女子高生は、ミントに捕らわれた女子高生たちに鎮静、疲労回復効果を与えているのだという。授業の合間合間に血で血を洗うような戦いを繰り広げる一般女子高生。心が荒んでいるからだ、疲れているのだとミント女子高生は語る。眠り、癒されれば争いはなくなる。女子高生は平和な生き物になる。彼女は善意をもってしてこの凶行を引き起こした。

だが、だとすればガトリングガン女子高生をも標的とした理由が分からない。ガトリングガン女子高生は荒れても荒んでもいない。優れた性格と性質の素晴らしい人物なのだから。

本当で嘘ね、とミント女子高生は言った。無意識にではあろうが、自分の客観的な見え方を知り、そうあるべしと気を張っていた。完璧で完全な存在などどこにもいないはずの世界で、完璧を演じ続けていた。求められるままに立ち振る舞い、他者に勇気と希望とチョコを与えた。自らを犠牲に、輝いていた。

――それは。

アンチマテリアルライフル女子高生こそが、誰よりも理解していたはずの真実だったのに。

心に暗い影が過ぎった瞬間、アンチマテリアルライフル女子高生の足にミントが絡みついた。

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