第1329話「気付けばパレスの中」

午前四時の玄関。

郵便配達員が現れた。

早朝は降雪(一般人が想定する雪が降っている状態を指す言葉。東北や北海道などでよく観測される)よりもずっと路面凍結が危険要因であり、毎日三人ほどの郵便配達員が転倒事故で息絶えている。郵便配達員は想像よりもずっと過酷な職業であり、そして給料も控えめだった。ボロボロになった配達員の姿を見た老人が話しかけてくる。何か欲しいものはあるかい。郵便配達員は言った。力が欲しい。世の理不尽に抗うための力。支配に反逆するための力。上司に逆らうための力が欲しい。老人は気味の悪い笑みを浮かべ、郵便配達員の肩に手を置いた。お前の心の叫びは聞き入れられた。わしは今からお前のペルソナとなろう。抗え! 反逆せよ! お前の正義を此処に示せ! 配達員は唆されるまま、郵便局に戻った。

だがいきなり長いレールガンを持った女子高生がやってきて、とにかくすごい攻撃で配達員にとりついた反逆の意志を落ち着け、常識という名の仮面を被せた。

社会は平常運転を維持した。

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