第1297話「強者と強者」

午前二時のヨーロッパ。

帯刀女子高生が現れた。

バゼラード女子高生は帯刀女子高生(一般人が想定する刀を携えた兵器女子高生を指す言葉。レールガン女子高生には至らないまでも凄まじい戦闘能力を誇り、また神出鬼没の女子高生としても知られる)よりもずっと後に生まれた女子高生ではあったが、その才覚は随一だった。バゼラードの刃が届く範囲内にしか攻撃できず、距離という点で見た場合のディスアドバンテージが大きいはずの彼女。しかしバゼラードは一般的には短剣であるが、地域によってはショートソードほどの長さがあったりする。長さが不定、という要素だけをピックアップして抽出したバゼラード女子高生の得物は彼女自身の才もあって「敵対者を両断する長さを持つ」という概念の刃となり、太刀筋さえ合致すればどれほど遠方の相手でも断ち切る絶対の魔剣となっていた。

ヨーロッパ全土で不敗の女として知れ渡ったバゼラード女子高生。深夜、彼女は寝床から起き上がり、愛刀のバゼラードを手に取った。眠りを破るほどの強烈な敵意。寝床を離れて夜の街に躍り出る。強者の気配――月光の下で刀を構える来訪者は、帯刀女子高生を名乗った。

無音。息を吸う音も無い世界の中で、意識するのは互いのみ。バゼラード女子高生は直感した。自身がヨーロッパ一の剣豪ならば、目前にいる女子高生も剣の頂きに位置する存在だ。本能的に死を感じ取る。どうやってかは分からないが、向かう相手の斬撃は間違いなくバゼラード女子高生の命を絶つだろう。ならばこれは速さの勝負だ。戦いは一瞬で決着する。バゼラード女子高生が剣を振るうのが先か、帯刀女子高生が首を断つのが先か。

だがいきなり風が吹いて、とにかく前触れといったものを感じさせる間もなくその時は訪れた。

真っ二つに折れたバゼラードがヨーロッパの大地に突き刺さった。

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