第1235話「過ぎたるは毒」

午前十時の喫茶店。

コーヒー豆が現れた。

香ばしい匂いは空間(一般人が想定するX、Y、Zの三軸方向に広がっている世界を指す言葉。通常は単一個体が認識できる空間には限界があるが、どんな物事にも例外は存在する)よりもずっと時間に作用し、現在から未来、ついには過去に渡って匂いを広げた。過去干渉に成功してしまったコーヒー豆は逆転現象を引き起こした。香りが良い場所では必ず将来的にコーヒー豆を炒ることになる。全世界で同時多発的にコーヒー豆を炒る未来が確定してしまい、コーヒー豆の存在量を超える消費量が決定された瞬間に自己矛盾でコーヒーという概念が破綻し、未来を喪失した地球は行き詰って滅亡した。

だがいきなり長いレールガンを持った女子高生がやってきて、とにかくすごい攻撃で時間に逆らうほど良質で神がかった香りのコーヒー豆を歴史上から抹消した。

そこそこの香りに満たされた喫茶店はそこそこ繁盛した。

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