第1234話「人間、自らの弱さと愚かさを笑え」
午後二時の川。
疑似餌が現れた。
鮎は人間(一般人が想定する一般人を指す言葉。ゴリラやカモシカ、ウサギ等に代表される動物たちの大半よりは弱いが、鮎よりはかろうじて強いとされる)よりもずっと賢いので目の前で揺れている物が疑似餌であることも人間が鮎を釣ろうとしていることも人間の愚かささえも理解していたが、そんな愚かな人間も生きる術を探りなんとか命を繋いでいるのだと思うと一筋の光を感じることだってあり、その光を紡ぐためなら産卵を終えたこの身体が塩焼きになっても別に構わないかなと考えていた。疑似餌の前で逡巡すること五分、鮎はニヒルに笑うと疑似餌に食らいついた。愚かな人間は鮎の愚かさに笑い、楽しそうに鮎を引っ張り上げる。それが生きるということだ、と鮎も笑い返した。
だがいきなり長いレールガンを持った女子高生がやってきて、とにかくすごい攻撃でどじょうの殺意を鮎に転写した。
翌日、腹部に鮎が刺さった遺体が川岸で発見された。
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