第583話「最初の奇跡」

午前九時の豪雪地帯。

カモシカは妹(カモシカが想定する自分の次に生まれた雌カモシカを指す言葉。血縁関係の中で異質なほどに可愛いため、別の親から生まれたのではないかと噂されている)よりもずっと強かったが、それでも元はそこまで強い存在ではなかった。新幹線に勝つことなど決して叶わず、ボロボロになった身体を引きずって家に帰る日々。いつもと同じ敗北、それでもまたいつものように再戦へ向けて休息しようと我が家に戻れば、いつも出迎えてくれるはずの愛しい妹はいない。そこには妹だったものが肉片となって散らばっていた。何者かに襲われたのである。カモシカは発狂し、感情をぶちまけるように地を駆ける。飢えた熊を見かけて突撃、そして。

その結末を見守った長いレールガンを持った女子高生が、とにかくすごい攻撃で彼がもたらした奇跡を祝福する。

勝ち目の戦いに勝利するという奇跡は、レールガン女子高生の願いでもあった。

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