「独白_パンジャンドラム女子大生」

「私は女子高生だった。けど、今は女子高生じゃない。女子大生だ。

「女子大生とは女子高生ではない存在のことを指す。そして、大人でもない。一般人でもない。大人なら、これほど狂気に飲まれることはないだろう。社会を回す歯車として日々従事する大人ならば、未来に絶望することはあれど、正気を失い、他人を襲うことはない。それは女子大生特有の症状だ。

「女子高生と大人の狭間にある、女子大生だからこそ。

「女子大生は女子高生ではない。女子高生ではなくなってしまった。

「女子高生が女子高生としての力を振るうことができるのは、たった三年の間だけ。三年を過ぎれば、女子高生はその特異な戦闘能力を徐々に失っていき、女子大生という移行期間を経て大人に変化する。

「女子高生と大人は何もかもが異なる。生き方も、考え方も、その強さも。

「だというのに、女子高生は大人に変質する。歪む。その変質に耐えられず、女子大生の多くは発狂する。狂気に堕ちる。

「女子大生はかつて“女子高生であった”という過去から、あらゆることに対して特権的地位を得ている。殺人の罪さえ問われないことがほとんどだ。

「…………。

「ああ、分かっている。分からないことが分かっている。

「そもそも、女子高生とは何なのか。どうして女子高生だけが特異な戦闘能力を得たのか。女子高生は何のために存在しているのか。

「だが、間違いないことが一つだけ。

「レールガン女子高生。

「原初にして頂点たる女子高生。突如として現れ、レールガンを撃ち放つ女子高生が関連している。女子高生の発生に、レールガン女子高生が影響している。

「永遠に女子高生であり続けている、あの女子高生が。

「…………。

「レールガン女子高生について深く知ることはできていない。

「しかし、変化を確認している。

「レールガン女子高生はとある事件を切欠に、女子高生たちと関係を深めていった。過干渉を避けていたはずのレールガン女子高生が、彼女の存在認知を境にして揺らぎ始めた。

「レールガン女子高生になりきっていた女子高生。レールガン女子高生と最も親しい女子高生。レールガン女子高生と強い絆を結んだ女子高生。

「すなわち、なりきりレールガン女子高生。

「なりきりレールガン女子高生によってレールガン女子高生は僅かではあるが変化した。なりきりレールガン女子高生の存在が、レールガン女子高生に影響を及ぼしている。

「だとすれば。

「レールガン女子高生が、なりきりレールガン女子高生の存在に影響を与えている可能性はないだろうか。相互に影響を与えあっている可能性は。

「…………。

「私は研究資料に目を通した。

「連中の計画には、なりきりレールガン女子高生が必要だった。

「女子高生は歳をとる。

「なりきりレールガン女子高生だって例外ではない。

「なりきりレールガン女子高生は、あと一年もすれば女子大生になる。

「では、そのときレールガン女子高生は?

「なりきりレールガン女子高生とレールガン女子高生が相互に影響し合っているとすれば……なりきりレールガン女子大生になったとき、レールガン女子高生はどうなる?

「組織の連中は考えた。

「レールガン女子高生はレールガン女子大生となり、弱体化する。

「でも違った。

「通常の時間の流れから外れた女子高生がどうなるのか、私は知らない。レールガン女子高生と結びつきの強い女子高生が仮にそうなった場合、どうなるのか想像もつかない。

「少なくとも、連中の思い通りにはならなかった。

「おそらく、もっと大変なことになった。

「私の眼前には、時間を加速させる装置があった。

「私を叩きのめしたあの女は。

「なりきりレールガン女子大生だった。

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