第118話「さよならを教えて」
午後五時の病院。
屋上で煙草を吸う入院患者が現れた。
患者は鴉(一般人が想定する快活で人懐っこい印象の屋上から下界を眺める生物を指す言葉。いつか空を飛ぶ)よりもずっと天使に依存していたが、薄汚れて見えるはずの鴉を汚くないと肯定してやる程度には好意を抱いていた。とはいえ入院患者が鴉に抱いたその好意は彼女の在り方そのものに対する感情ではなく、鴉が可哀想な背景を持っていたという一点のみが理由であり、すなわち可哀想な人を肯定してやれる自分は素晴らしい人間だと自己を肯定せんが故の行動でしかなかった。入院しているというのに煙草を吸っているような不良患者はどこまでいってもそういう人間でしかないのだった。
だがいきなり長いレールガンを持った女子高生がやってきて、とにかくすごい攻撃で別れの言葉を指教した。
すべてを理解した患者は自己嫌悪の末に現実からさよならした。
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