【33】似た者同士
翌朝、
だから、いじわるお妃がいても
それは、
母が他界し、父と出会ってから、彼女ひとりでは経験できないことを、飛び抜けて味わってきた。まさに、夢のような時間を味わってきたと感謝しているのだ。生きてきたことにも、産まれてきたことにも。
物悲しい気持ちを抱え、朝食の用意をしていると、扉が開いた。
「帰ったんだ」
いつもの朝食の時間に、何食わぬ顔で姿を現した父に
「そう思っていたから、一緒にご飯を食べようと来たんでしょ?」
父は軽く笑って、定位置と言わんばかりに昨夜、
「本当に、似た者同士なのね」
ふと、
「お帰りなさい」
うれしそうな父の笑みを見て、
月日が過ぎて、
彼女は返事を出さなかった。
書こうとすれば父や
更に月日は流れ、一度だけ、彼女は
年を取っても変わらぬふたりを見て思わず駆け出しそうになったが、すぐに我に返り、人知れず涙する。
それからも
父が亡くなっても、彼女は
何十年かが過ぎ、いつの間にか
そういえば、しばらく前に王が変わったと耳にしていたと思い出し、そうかと、遠くから悼んだ。
少しの月日が流れ、彼女もこの世を去る。
彼女が亡くなってから、どのくらいが経ったか。遺体発見と同日に、彼女の大切にしていた手紙が見つかる。
彼女は
「お帰り」
葬儀の夜、ひとりの老爺が彼女の骨壺を抱き、慈しむ姿があったという。
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