あとがき
「あとがきなんて、不要だろうか」
実はいつもいつも、そんなことを思っているのですが。
そう言いながらも書いてしまいますね、あとがき。まあすべての作品につけているわけではないのですけれども。
今回は、前作を書き上げたあと、もう本当に「ああ、もう本当の本当に、ひとっつも書くことがないよ〜」と思っていたのです。
真っ白。からっぽ。なんにもない。
ところがある朝、ふと目が覚めてまだベッドでごろごろしていたとき――そう、私は明け方近くに目が覚めて、まだ外が暗いような時間帯になにかをひらめくことが多いのです――「しのりん」「ゆのぽん」と呼び合っている、男の子のような女の子と、女の子のような男の子が赤いロープウェイにゆられている、そういうイメージが急に湧き起こってきたのでした。
そうしてあのプロローグのワンシーンを一気に書いたあとは、いつものような「芋づる式」。
プロット? そんなもんはありません(断言するな)。
登場人物も、そのとき、そのときで必要な人を最小限で出そう、という以外はなにも決めていませんでした。なにしろ短い話にしたかったので……といいながら、結局十万字越えはしてしまって、なんのことやらという感じですが。
プロットがあったほうがいいんだろうな、というのは、他のすばらしい書き手さんたちの執筆のご様子などを拝見していると切実に思うのですが、どうも私の執筆方法にはそぐわないもののようで……。
なんだかこう、書いていて自分自身が楽しめなくなってくると、どんどん書いているものそのものまでつまんないものに見えてきて、やがて書く気が失せるのですよね。つまりプロットありきだと、自滅しやすい書き手なのです。
そういう失敗を繰り返してきた果ての、この「ぶっつけ本番」執筆なのでした。
よい子のみなさんは、あんまり真似してはいけません(笑)。
今回は、いつもの紋切り型(という厳しいご感想をいただいたことがあって・汗)なキャラクターではなしに、わりに身近にいそうな普通のたたずまいの登場人物を目指してみました。
しかしそうすると、思った以上に人物にリアルさが付加されてきて、どんどん作者の身近にいる(あるいはいた)色んな人たちをモデルにせざるを得なくなり、途中からはもう、作者自身がちょっと怖いぐらいに思いつつの執筆でした。まあ誰とは言いませんが……。
ある意味ホラーです。対作者限定ホラー(ってなんや!)。
夏だからまあいいか。
お読みくださったかたが、「いるいる、こういう奴!」と思ってくださっていたら幸いです。
色んな困った人たちにも、人生があるんですよね。つらいことや悲しいこと、悩みやいらだち、うまくいかないもどかしさ、もろもろのことがあって生きているんだろうなあなんて、勝手な想像しつつ、書きながらそう思ったりした一ヶ月でした。
皆さんのお心に、なにがしかのものが残るようでしたら幸いです。
つたない文章ではありましたが、ここまで丹念にお読みくださり、ご感想やSNS上での読了宣言など、さまざまにお付き合いくださいました皆様、まことにありがとうございました。
それでは、いつかまた、どこかで。
2017年7月18日
つづれ しういち
赤いロープウェイにのって つづれ しういち @marumariko508312
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