「愛妻家」ですがなにか?
若狭屋 真夏(九代目)
妻に萌える
私と妻が結婚して4年、もう4年といえば「もう」だが「まだ」といえば「まだ」だ。私の場合は「まだ」のようだ。朝起きるとすでに私のドキドキが始まる。
「おはよう」と妻が私に言ってくれる。私にだ。
それだけで胸がドキドキする。
「お、おはよう」と私は返事をする。
「おはよう」と言って妻は微笑む。「ドっキューン」も、萌える。
彼女は私にコーヒーを渡してくれる。神様これでいいのか?妻のような可愛くて頭が良くて素晴らしい女性が私に、この「虫けらのような私」のためにコーヒーを入れてくれる。あー神様、ありがとうございます。
「どうしたの?変なの、翔くん」といって彼女は微笑む。
「な、、なんでもないよ」と私は平静を装う。
「ねぇ。翔くん」彼女が顔を近づける。
「な、、、なに?」
「ね?今度の日曜日デートしない?」
「で。。デート??」
「うん、新しくショッピングモールできたでしょ?」
「うん」
「そこに新しいアイスクリーム屋さんが出来たの。なんと関西初上陸だよ。そのアイス食べに行かない?」
「うん、いこいこ。おれも気になってたんだよね」
実は日曜日は接待ゴルフなんだが。。。困ったな。。。いやなにも困ることは無い。
「ちょっと待ってて」
そう言って私は車に向かった。車にはお小遣いを5か月分ためて買ったチタン製のゴルフセットがある。
私はそのドライバーを一本だすと、「をりゃー」と気合を入れて折ろうとする、一回ではさすがに折れない、よし。我が「会心の一撃」を食らえばよい。このドライバーめ。というと、私は力の限りドライバーの両端を持って曲げた。
さすがチタン製、なかなか骨のあるやつだったが、所詮は人間の作ったもの、わが手の中で眠れと引導を渡しこれを曲げた。
そのあとスマホを出すと「ぶちょー」を探し電話をする。
「あ。もしもしおはようございます。田代です。部長非常に申し上げにくい事ですが、、、」
「なに田代君。こんな朝早くから・・・・」
「いえ、次の日曜日のゴルフに備えて昨日打ちっぱなしに行ったのですが。。そこでドライバーが曲がってしまいまして。。。」
「え!!君のチタン製だったよね、どんだけ練習したの???ってかどうやったら曲がるの、チタン製??」
「いやぁー少し熱が入りすぎまして。。。」
「どんだけ熱いれてんの?ってかその熱仕事に分けた方が君出世するよ」
「出世とか興味ないんで、」
「興味いれてよ、お願いだから。。。」
「それで申し上げにくいんですが。。。。」
「わかったよ、ドライバー無かったらゴルフ出来ないでしょ。代わりに同期の山形くんに来てもらうよ」
「すいません」
と言って電話を切った、、、。
「ミッションコンプリート」と口ずさんんだ。
家に戻って奥さんに「日曜日。大丈夫だよ。。。アイス楽しみだね」と奥さんに微笑んだ。
愛する奥さんの手料理を頂いて出社する。。
毎日同じ駅から同じ駅に降り会社に向かう。
そして会社に到着する。
「おーい田代」と声がする。同期の山形だ。
「おはよう」というと山形はウエスタンラリアウトをかけた。
「お前、絶対ご祝儀払いたくないだろ?」山形は開口一番これである・
「何が悲しくて休日に婚約者残して上司と接待ゴルフなんてつまらんことせにゃあかんのだ」
「わるい、わるい。。。」
「どうせお前の事だ。チタン製のドライバーでも自分の手で折ったんだろ。」
ギック
「嫁さんが近くにできたショッピングモールに行きたくてその両手で折ったんだろ。」
「い、いや。そんなことはしていない」
「ちゃんと目を見て話せ。田代翔太。お前は嘘をつくときは絶対に人の目を見ない」
しばしの沈黙の後。。
「まあ。幸いその日は由紀子さんは仕事だからいいのだが。。。」山形の婚約者の名前が由紀子さんだ。
「なんだ、最初からそう言えよ」
山形は卍固めをかけようとしていた。
「わかった、わかったよ」と財布を出し5千円に手をかけたが山形は一万円を持って行った
「毎度あり」
「し、しどい」私が一月我慢してためた「諭吉」さんをいとも簡単に誘拐されるとは。。。。
「ゴルフだって金かかるんだぜ。おまけに「接待」という我慢をしなきゃいかん。迷惑料だと思え」
こうして私は次の日曜日奥さんとショッピングモールで念願のアイスクリームを食べることが出来た。奥さんは服と靴を買ったらしいが、わたしはそんなものはいらん。奥さんの笑顔が見れればいいのだ。
つまりは私は「愛妻家」という病気なのだ。
しかし、愛妻家で何が悪い?妻を愛して何が悪い。。
そう思いながら今日もお小遣いの500円を握りしめて出社する。。
そんな物語が始まる。
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