第11話 ゼンゼンワカンネェーワ

「ブワッはっ!お前か!アルカリぶっ飛ばしたっていう人間わ!」


 ………………


 控えめにいって常軌を逸した規格外生物。花魁のような派手な服装、髪型をゆすび巨大なキセルをふかし、顔つきは、控えめにいってワニそのもの。そして何よりデカイ。私がこれまで見てきたどのカルマンよりはるかにでかい。


「ブワッはっ!なんだいアルカリのやつこんなこぼそい人間に、やられたのかい?情けないねぇ~」


 ………………


 その巨大なカルマンは、腰を抜かし動けない私の顎を丸太のように太い二本の指で転がすかのようにさする。そしてカルマン特有の爬虫類のような硬骨な巨大な黄色い目で私を見るにらむ


 ………………


「ブワッはっ!あんた名前は…………」


 ………………


「名前は…………」


「……………………」


「み…………美琴です…………」


 震えた声…………


 自分が今おかれた状況…………目前に迫りくる死すらも理解できない。


 それが、今の私ができる精一杯のこと抵抗…………


「ブワッはっ!」


 その目は、オレをきたねぇ指でつまみ、貫くかのような目でオレを見続けている。


「………………」


 オレとそいつの間にぐるぐるとまわるような、空白の時間が流れおちる。


「ブワッはっ!ははははは!」


 そいつは、キセルをふかし希有に煙たく笑う。そして…………


「ブワッはっ!お前は、誰だい?名を名乗りな」


 バカデカイ馬鹿顔が、オレを取って食わんとばかりさらに近ずく。


 ………………オレは…………オレは…………


 オレは、何故か立ち上がり際、裏拳をそいつの巨大な顎に叩き込んでいた


「……………………」


 圧倒的な変わらぬ恐怖。


 オレは…………オレは…………


「ブワッはっ!ははははは!気に入った!」


 そいつは、これ見よがしにオレに言う。


「ブワッはっ!もう一人ひとりのおまえ!お前は、気に入った!名がないのなら今、わしがやろう!今日からおまえは、ランわしの一字いちじをくれてやる大事に名乗れ!」


「は?あ?」


「ブワッはっ!なんだ嬉しくないのか?欄の字は、ここら辺じゃ便利だぞ!大抵のことは、無条件ですべて上手くいく!おまえは、今日からわしの影として働くんだ!いやとは、言わせない!わかったね!」


「ぜんぜんわかんねぇわ!」


 話がなにやら勝手に高速で流れていく。オレは………………


「ブワッはっ!欄、手始めに、お前まずは、この文持って、このじじぃのとこ行ってきな!詳しい話は、そのじじいに聞きな!分かったね」


「いやだからぜんぜんわか…………」


 また…………なかば強制的に目隠しをされ連れていかれるオレ…………


「いやいやぜんぜんわかんねぇわ」


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