私のつづき

二律背反

私のつづき

菜月と楓

「おーい、かえで


下駄箱で長身の女学生が呼びかける。

名をみなと菜月なつき。高校二年。栗色のセミロング。右耳あたりにかかる虹色のバレッタはその日の気分で変えている。

170センチと同世代では高めの身長を気にする、普通の子。


「何?」

「一緒に帰ろうよ」

「あんた、すなおは?」


呼びかけられた小柄な女生徒はそっけなく問う。

名を津下つしたかえで。同じく高校二年。黒髪は伸ばさず常にショート。右耳に銀のシンプルなイヤーカフ。身長は155センチと低め。


身長差のある二人が友達になってもう6年になる。


「今日は帰らないよ」

「あっそ」


学校を後にして、二人は黙々と街路を歩く。


「うみねこに寄る?」

「寄りたいのはあんたでしょ。〈幻術師〉の新刊」

「それは当然だよね」

「いいけど、〈時間線〉は?」

「もっちろん進んでるよ」


〈時間線〉正しくは〈時間線の砂城〉は、二人で作っている漫画のこと。

ストーリー、ネームは菜月、画は楓。二人は役割を交代しながら共著をいくつか作っていた。

内容を話し合いつつ、二人は街で一番大きい商業施設〈うみねこモール〉へ。

ショップを巡り、馴染みの店員と漫画の話題に興じ、買い物をして帰路に着く。


「んじゃね」

「ネーム、夜までには送ってよ」


くぎを刺す楓。


「はいはい」


応じる菜月。

けれどネームは楓のもとに届かず、二人の再会は一週間後になった。

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