密着!ハシビロコウのへいげんちほー潜入大捜査!!

~数日前~






「なにぃ?へいげんちほーで武力衝突だぁ?」

「はい…。それも一度や二度ではないと…」














ここはジャパリパーク某所にあるジャパリ警察署。

私ハシビロコウはこのジャパリパークの平和と秩序を守るジャパリパーク警察班、通称ジャパ警の一員として日々奮闘していた。

そんなある日の事だった。






「それで被害は?」

「幸いケガをした方はまだいないみたいなんですけど、どうも近隣のフレンズからの苦情の方が酷くて…」

「おいおい戦争に苦情もクソもねぇだろ…。まったくとんだおめでたい連中だな」





まぁゴリさんの言うことも分かる。

確かにこのジャパリパークで悪事を働くのはせいぜいセルリアン位…平和ボケするなという方が無理な話だ。

だからこそ今回のこの騒動は寝耳に水だった。





「で、その苦情ってのは具体的にどんなのが来てるんだ?」

「…それについては私から説明しましょう」

「あっ、イルイルさん」



颯爽と現れたのはダジャレデカことインドガビアルのイルイルさん。

いつもならここでイルイルもいるいる~などとダジャレをかましてくるのだが今日はいつになく冷静だった。

きっと彼女もまた今回の事態は異常だという事を察知しているのだろう。



「えー…それでは“ちょうさ”んざんだった“ちょうさ”結果を報告しますと…」

「(あっ、今さらっとダジャレ入れてきた)」






・昼夜構わず戦ってるから安心して夜も眠れない


・日々血で血を洗う抗争が繰り広げられてる


・歩いているといきなり武装したふたりぐみにどこから来たと尋ねられ、返答によっては拉致される


・近くを通りかかったら角の生えたフレンズに強そうな奴だ等と因縁をつけられ喧嘩をふっかけられた










「…といったところでしょうか」

「…だいぶ治安が悪いみたいですね」



武装集団に拉致、挙げ句の果てには血で血を洗う抗争…次々と物騒なワードが挙げられた。

もしかすると私達が思っているより事態は深刻なのかもしれない。




「なるほどな…。で、その対立してる勢力の詳細は?」

「ご心配なく。偵察に向かわせた者がそろそろ…」








ガチャ




「どうもー、漫才デカことアマゾンツリーボアのアマボアと」

「エメラルドツリーボアのエメボアよ」

「いや~実はさっき最近話題沸騰中のふんそうちほーに潜入してきたんですけどもね、これが中々おもろい事になってたんで今日は皆さんにその話をしようと思います~」

「…どんな事になってたのか私も早く知りたいわ」

「いやお前もさっき一緒に潜入してきたやないかーい!なんて言うてますけどね」



「…結果は?」

「…はい?」

「け、っ、か、は?」



「えー…我々が調べて参りましたところ、どうやら双方のボスはライオンとヘラジカという事が判明致しました」

「…また噂にあった拉致や因縁をつけられる等もこれらが関与していると見て間違いないと思われます」

「…以上か?」

「あ、はい」




こんな感じで毎回漫才で結果を報告しようとしてくれるふたりなんだけどゴリさんには不評みたいでいつも最後まで聞かせてもらえない。

私は面白くて好きなんだけど…。





「それで、どうするんですか?」

「無論見過ごすわけにはいかねぇ。奴等の武力衝突を阻止しへいげんちほーに再び平和を取り戻す為に潜入するぞコラ!」

「おや、ゴリさん自ら敵の懐に潜り込むとはデカの鑑ですね」

「あ?俺は後方司令に決まってんだろ」

「……なるほど。では私は補佐という事で」

「えーと…うちらはさっき潜入してきたばっかやしなぁ…」








「…え?」





一同「」ジィー










「…えぇ~!?」























~へいげんちほー~



「おぉ!よく来たな!お前がハシビロコウか」

「は、はい…。よろしくお願いします」

「流石は歴戦の勇士…面構えが違うな。何でも狙った獲物は逃さない百発百中ワンショットワンキルの天才スナイパー!…だったか?」

「は、はぁ…」




ゴリさんのお口添えのお陰で私は何の疑いもなくヘラジカ軍団に迎え入れられた…のはいいんだけどゴリさん一体何を吹聴したんだろう…。

一応私の素性は隠してあるらしいけどそもそも隠す必要はあったのだろうか。

ゴリさん曰く「その方が緊張感出るだろうがコラ!」って事らしいけど………ん?





ジィー








何か私凄く見られてる…?

あ、そうか自己紹介まだだっけ…。

あんまり注目を浴びるのは好きじゃないけどここは怪しまれない為にも穏便に…。



「ハ、ハシビロコウです…。よろしくお願いします」





『』ビクゥ!!



「オ、オオアルマジロダヨー。ヨロシクネー(ヘラジカ様余りにも勝てないからって何か凄いの連れてきちゃった…あれっていわゆる傭兵ってやつ?いやもしかしたらもっとヤバいウラの…)」

「シ、シロサイデスワ。ヨロシクデスワ(い、いけませんわ見た目に囚われて退いてしまっては騎士の名が…でも怖いですわああぁぁぁ!!)」

「」ガクガクブルブル

「あぁ!?カメレオン様!お気を確かに!!」

「ご、ごめんねぇー!私達ちょっとカメレオンちゃんを介抱しないとだからまた後でー!!」

「…」





あ、あれ…何か明らかに警戒されてたんだけど……もしかして私疑われてる?

まずい…このままだとおとり捜査という事がバレてしまう。

…いやだから別にバレてもあんまり問題は無いと思うんだけど一応ゴリさんの言うことには大人しく従っておこう…。







「早速で悪いんだが君には来週の第20回縄張り争いに参加してもらおう」











…来た!

そうだこの時を待っていたんだ。

私の任務はこの紛争の内情を知り可能であれば武力衝突を阻止する…ってえ?今何て言った?



「な、縄張り争い…?」

「そうだ。今このへいげんちほーでは我々とライオン達で縄張り争いをしているんだ」

「じ、じゃあ紛争だとか血で血を洗う抗争というのは…」

「?何の事だ?」














何という事だ…。

という事は私達が集めた情報は全部嘘…?

いや嘘というよりは噂が噂を呼び更にその噂に尾ひれがついて今のような話になった…といったところなのかもしれない。


…でも良かった。

これで少なくとも私達が危惧していたような事態は避けられたという事だし。

となるとあと私にできる事はこの縄張り争いの行く末を見守る事と近隣のフレンズに迷惑をかけないようにする事くらいか…。




「(あとで合戦区域にバリケードでも作っておこうかな…)」






















~そして合戦当日~


「さぁ今日はいよいよ記念すべき第20回目の合戦だ!皆も既に知っているとは思うがそんな大変良いタイミングで我々に新しい仲間が加わったぞ!」

「天は私達に味方してくれてますのね」

「シロサイの言う通りだ!今度こそ勝つぞぉー!!」

『おー!!』




この一週間で両陣営の戦力は大方把握した。

向こうはライオンの指揮ともあってかなり連携が取れているらしく、かつオーロックスのパワーとアラビアオリックスの立ち回りには十分注意が必要だ。

となるとこちらの作戦は恐らくアルマジロさんとシロサイさんをメイン盾、偵察にカメレオンさん、そしてヘラジカ様と私で突破口を開く…といったところか。

いやでもまだ一度も勝てていないという事を考えるとこの程度の作戦では太刀打ちできないのかもしれないしそもそも私まだ今回の作戦すら聞かされていないんだけど…。




その時開戦を告げる笛の音が鳴り響いた。







「…よし、時は満ちた!!さぁ全員で城まで走って突撃だ!!」

『おー!!』


「…え?」



















~後日ジャパ警署内~



「…以上が報告になります」

「そうか…。ご苦労だったな…」


「…ご苦労だったな…じゃないですよ!あれだけ危険な任務だとかお前の行動一つでへいげんちほーがやけのはらちほーになるかもしれんとか言っておいて…」

「ま、まぁ何事も無くて良かったじゃねーかデカ長」

「そうですよ。落ち着いて下さいデカ長」

「デ、デカ長…?」

「おや、聞いてないんですか?今ジャパ警の間ではハシビロコウさんはふんそうちほーから還ってきた英雄として皆さん敬意を込めてそう呼んでいるんですよ」

「えぇ…」

「そういう事だ。つー訳でお前にデカを越えるデカ、デカ長の称号を与える!」

「…いりません!!」

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