第2話
そういえば、自己紹介がまだでしたね。私としたことが、物語を進めるあまりうっかりしていました。
私は、
花も恥じらう、高校三年生の十七歳。
容姿端麗、頭脳明晰。そのうえ、運動にかんしても才能に恵まれ、誰もが羨むキラキラとした毎日を謳歌している――なんてことはなく、いたって平凡な毎日を繰り返す少女A。
決して、スポットライトの当たることのない、エキストラの中のエキストラ。
なんとなくこのまま大学に進み、なんとなくで就職をし、なんとなくで付き合うことになった彼と、なんとなくで結婚。そして、波風のない穏やかなまま一生を終えるのだと思っていました。
『思っていました』と過去形なことについては、またの機会にお話するとして、そんな平凡だった私の人生を大いに狂わせてた張本人――もとい、恩人が私の前にいる
「弁天堂、世界人口の人数は何人だかわかるか?」
私の淹れた紅茶を一口飲んで、唐突に質問をする迷斎さん。この人は、まだ出会ってから短い間柄ですが、このようなよくわからないことを、いつも言ってきます。
「さあ、わかりません」と答えると、深くため息を吐き、これまたいつものように、無表情で淡々と言葉を吐き出します。
「七十三億。七十三億人だよ」
「へー、そんなにいるんですか?知りませんでした」
「こんなのは、一般常識中の一般常識だろ?そんなことも知らないから、お前は七十三億人中最下位に物覚えの悪い人間なのだよ」
「!?」
でましたでました。いつものように、迷斎さんの嫌味が始まりました。
ついでなので、迷斎さんのことも少しお話しますと――。
黒柳迷斎。
年齢不詳(見た目は三十代前半)。無職の大金持ち。
本人曰く、若い頃に莫大な財産を築き、その総資産額は三世代に渡って遊んで暮らせるほどだそうです。もちろん、どのように築いお金なのかはわかりませんが、それだけの額を稼ぐには違法であるに違いないと、私は考えています。
いや、正確にはそう考えさせられてしまうほどに、迷斎さんは見た目も中身も人は違い変わっているのです。
全身に黒いスーツを纏い、喪服を連想させる出で立ち。スーツの黒色が、蒼白い不健康そうな肌を際たたせています。そして、死んだ魚のように濁った目が、迷斎さんの黒く片寄った性格を表しているようで、私は苦手です。
そんな、変人奇人の迷斎さんですが、一部の人には有名な方で所謂、蒐集家。それも、怪奇な話を蒐集している。
世に言う『アウトコレクター』なのです。
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