fact-真実

萩原義和

第1話 捜索

第一話 捜索


主人公の名前は深澤和樹。


よく真面目だけが取り得の男だと言われる。


福祉大学を卒業して実家からほど近い介護施設に就職し介護士として働きはじめ一年ほどたった頃…その事故は起きた。


深澤はこの日夜勤勤務だった。


日勤者から申し送りを受け女性介護士の香苗と三階建ての介護施設の二階で夜勤をしていた。


午後十時 二階サービスステーション。


深澤

「今日は落ち着いているようですので…僕が十時の巡回行ってきますから先に仮眠取ってください(^_^)ゞ」


深澤は香苗に言った。


香苗

「分かった。じゃあ、先に休みます!あっ、それと私には敬語じゃなくて良いよ!」


深澤は少し困った顔をして返した。


深澤

「いや、先輩ですから。」


困った様子を見て笑顔になる香苗


香苗

「ほんと、深澤君て真面目だよね!じゃあ、先に休みます!」


香苗は先に休憩室にて仮眠に入った。


深澤は各部屋を見回っていた。


この日、ショートステイで施設に来ていた施設利用者を居室のトイレに案内。

介助を終えて最後の部屋に入る。


入った瞬間に深澤は部屋の異変に気づく。


この部屋を利用している千代さんの姿が見当たらない…


部屋にはベランダに出るための窓があるが開いてはおらず窓に取り付けられたストッパーも解除されていなかった。


千代さんの部屋は夜勤職員から常に見える位置にあり、千代さんが最初の巡回時間までに居室の部屋を自分で開け出てくることは一度もなかった。


深澤は千代さんの名を呼びながら二階中全て見回ったがどこにも見あたらず…仮眠中だった香苗に協力してもらい捜したが…見つけることは出来なかった。


先ほどとは比べ物にならないほどの困った顔で…


深澤

「香苗さん…どうしたら良いですか?」


香苗は冷静に答えた。


香苗

「三階夜勤者の朝倉君と由佳さんに連絡して協力して貰おう…そうだ朝倉君と由佳さんに施設での連絡役を頼んで、私が外を捜してくる。」


深澤

「いや、香苗さんに捜しに行かせるわけには行きません…僕が行きます!」


香苗

「分かった…じゃあ、私が三階に連絡しておくから…多分、外は真っ暗だから気をつけて。」


深澤小さく頷いた。


外に出た深澤…香苗の言うとおりあたりは真っ暗で何も見えなかった。


周辺すべて懐中電灯の光を頼りに捜した…とにかく必死に捜した。


深澤には捜すことしかできなかった。


結局、見つけ出すことは出来ず…その日のうちに警察に連絡、捜索願いを出した。


深澤の夜勤はあっという間に朝を迎えた。


夜勤を共にした香苗は深く落ち込む深澤にかける言葉が見つからなかった。


香苗自身も職歴十年で初めての出来事…深沢と同じく落ち込んでいた…


なんとか気持ちを落ち着けようと香苗は深沢を誘い香苗の車で行きつけのカフェに行くことにした。


カフェに向かう道…狭い山道に入った。


心配そうな顔をする深澤に香苗は思わず笑ってしまった。


香苗

「どうしたの?そんな深刻な顔して?二人で無理心中でもする?」


深澤

「えっ、冗談やめてくださいよ!」


香苗は爆笑した。


その香苗の様子を見た深澤は少し笑顔を見せ、同時に落ち着きを取り戻した。


狭くあれた道が少しひらけた。


そこに建っていたのはまるで廃工場のような建物…


中にはいるとアンティークな雑貨などが置かれていて、おしゃれなカフェになっていた。


店の奥から一人の男が出てくる。このカフェの店長…通称マスターだ!


マスター

「おっ、いらっしゃい!香苗ちゃんが男の人連れてくるなんて珍しいね。もしかして彼氏?」


香苗は少し恥ずかしそうに…


香苗

「違いますよ~(o゜▽゜)o職場の同僚です。」


深澤

「あっ、はじめまして!深澤と言います。」


マスター

「深澤さんね!まぁ、ゆっくりしていて」


とーマスターは店の奥に消えた。


深澤は香苗のおすすめのコーヒーを注文した。


何分かしてコーヒーが届く。同時に深澤の携帯がなった。


深澤が電話に出る。


内容は昨夜行方不明になった千代さんが遺体で発見されたっと言う連絡だった。


施設裏の川で警察が発見した。

警察が発見した時には既に亡くなっていた。


深澤から話を聴いた香苗は思わず涙がこぼれた。


それをみた深澤も涙がこみ上げてしまった。


深澤

「ごめんなさい。僕のせいで香苗さんに迷惑をかけてしまって…」


香苗

「なんで深澤君が謝るの?深澤君は何も悪くないよ!」


深澤

「警察は部屋の窓のストッパーはかけられたままで、あと千代さんの部屋が僕から常に見える場所だったから…きっと警察は僕のことを疑うと思います!」


香苗

「深澤君…考えすぎだよ…深澤君はちゃんと仕事してたよ!」


深澤

「僕、やっぱり帰ります!」


香苗

「えっ?まだ来たばっかりだよ!」


深澤はテーブルにコーヒー代をおき店から外に出た。


少し戸惑いながら香苗も後を追うように店を出た。


香苗は歩いていた深澤を呼び止め車に乗せた。

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