第2話
次の日の土曜日。雪美は学校の玄関前でさんちゃんが出てくるのを待っていた。
今日は土曜日で学校は休みだが、成績がイマイチなさんちゃんは学校で補習授業を受けているらしい。
正午頃、さんちゃんが玄関から姿を現した。
雪美は少し離れてその後を追った。
さんちゃんは校舎裏の駐輪場へ向かい、自転車に乗ってすいすいと行ってしまった。
「ど…どうしよう」
徒歩で学校に来た雪美はすっかり途方に暮れてしまった。
「タクシー呼んでる時間はないし…」
悩んだ挙句、駐輪場にある鍵の掛かっていない自転車をちょっと拝借することにした。
雪美はひたすらさんちゃんを尾行した。人通りの多い道だからか、さんちゃんは尾行されていることにまったく気付いてないようだ。
突然さんちゃんがブレーキをかけ、左の道へ曲がった。少し離れて、雪美はその後を追った。
さんちゃんは突き当たりの本屋に入って行った。
どうやら勉強に使う参考書を見ているらしい。
さんちゃんが中々参考書の棚の前から離れないため、雪美はいったん本屋を出て隣りの洋服屋に入って行った。
「あっ!この服可愛い〜!千円とか安!金持ってくればよかったな〜」
十分ほどで店を出て、再び本屋に戻ってきた。
「あ!しまった!」
雪美は大声をあげた。参考書の棚の前にいたはずのさんちゃんが、いつの間にかいなくなっていたのである。
「くそ〜こんなことなら洋服屋に行かずにそのまま待ってればよかった〜」
取りあえず、その辺にさんちゃんの姿が見えないかどうか探してみることにした。しかし、それらしき人物はどこにも見当たらなかった。
と、その時だった。
「雪美?」と、誰かが後ろから話しかけてきたのである。
振り返ると、よく見知っている顔がそこにあった。
同じクラスの
「こんなところで何してるの?葵ちゃんと一緒?」
「ううん、一人だよ」
「珍しいわね。あなたが一人で行動するなんて」
「うん、今日はちょっとした任務があって」
「任務?」
雪美は簡潔にわけを話した。
「ふーん、大変そうね。で、その男の子は今どこに?」
聞かれて雪美はハッとした。
「そうだ、見失っちゃったんだった!探さなきゃ!」
「私も手伝ってあげる。さんちゃんて人の特徴教えて」
「えーと、やせてて背が高くて、天然パーマで、色黒で、眼鏡を掛けてる人」
雪美が説明を終えると晴子はサッとどこかへ走っていき、1分後にまた戻ってきた。
「見つけたわ、あの人でしょ」
そう言って、レジに並んでいる一人の少年を指差した。それは紛れもなくさんちゃんだった。
「へぇ〜!晴子って人探すの上手いね」
「私の唯一の特技なの。でもこの特技のせいで、ウォー○ーを探す本とかあんまし楽しめないのよね」
「へ…へぇ〜」
「あ、彼店を出るわよ。行きましょ」
雪美は慌てて店を出た。
さんちゃんはすぐさま自転車にまたがってどこかへ行ってしまった。
一方、雪美は自分の停めた自転車がどれだかわからなくなり、かなり焦っていた。
「ちょっと、何してんのよ」
いらだたしげに晴子が言った。
「私の…じゃないけど、とめた自転車がどれだかわからないんだよ〜」
半泣きで雪美は言った。
「んもー!しょうがないわね」
晴子は自分の乗ってきた自転車にまたがり、後ろに乗るよう雪美に指示した。
「ありがとう、晴子!」
晴子が全力で自転車をこいでくれたおかげで、なんとか無事にさんちゃんに追いつくことができた。
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