第2話 世紀末の朝
「おにーちゃん、おきてー、朝だよー」
声が聞こえる。それもかわいい声で。しかし、返事はしない。
「おにーちゃん、昨日職場でいやなことがあったからって、部屋にこもらないでー」
声が聞こえる。それもかわいい声で。しかし、耳が痛い。
ドンドン、と足音が近づいてきてそのまま部屋の扉がひらき、布団をはがされ
「もう、起きてって言ってるじゃん。朝ごはんさめちゃうから。」
「やぁ小春、いい朝だね。」
そ知らぬ顔で、それも飛びっきりの笑顔で朝の挨拶を試みるも、
「いい朝じゃないよおにいちゃん」
とため息をつきながら不服そうな顔を浮かべる妹。
「朝からため息とは、幸せが逃げるぞこの不幸者。」
「誰のせいだと思ってるの。昨日職場で嫌なことあったからってその場の勢いで辞めちゃうなんて、これで何社目なのもう。」
「あれは、あの偉そうな上司が教えてきたやり方があまりにも非効率で非生産的だったから意見したらキレてきただけで、俺は悪くないぞ今までも、そしてこれからもだ。」
「偉そうにに言わないでよ。お兄ちゃんが辞めちゃったせいで、今月も厳しいんだからね私のバイト代だけじゃ」
こう言われるとぐうの音も出ない。
今の我が家の家計は妹のおかげで何とか保っているようなもの。なにせ先の戦争で両親をなくした俺たちは今日まで兄妹二人で生きてきたのだ。妹が働くようになるまではがんばってきたものの、いざ共働きになると一気に肩の重荷が取れてしまったみたいでどうもうまくいかない。だから、
「なぁ妹よ、兄はだいぶ疲れているのだよ。ここいらで少し世紀末ニートさせてはくれないかな?」
「は?」
この世に姓をうけ23年はじめて妹がごみを見る目をみた。
「とにかくこのままでは我が北島家は破綻してしまいます。二人して奴隷市おくりで。それは避けなくてはないりません。だからすぐにでも新しい職を見つけてきてくださいわかりましたね、彰人にいさま。」
「わかりました、小春様。」
妹は兄より強し。この時代のおかげで妹は成長をとげたみたいだ。
「わかったら、ご飯食べて職安に行く」
またあそこにいくのか、と思いながら部屋から出て準備するのであった。
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