第14話

 携帯から姉にメールを送った。泊まるところが決まったのかどうかを尋ねるためだった。猛烈に好きというほどではないが、嫌いじゃない。世界でたった一人の姉なのだ。何かがあったらやっぱり心配だし、頼れる友達が一人もいないもの知っている。それでも何だか強気の姉が魅力的でもあり、その魅力がなかなかどうして麻薬のようで、こうして信号待ちをしながらのパピ子にメールを送信させてしまった。

 信号が青に切り替わり、隣の人が歩き出したことをきっかけにパピ子もそれを追うようにして横断歩道を渡る。待ち合わせしているデニーズのもう目と鼻の先だった。

 携帯が鳴る。姉からの返信か、早いな、と着信音を止めて画面を見ると、友恵からだった。暑いので先に入っている、ということだった。

 パピ子はそれに返信はしない。本当にもうすぐだったからだった。

 ふと横を見ると、それまでそこにあった回転寿司屋がなくなっていた事に気付く。駐車場になるらしく、最近良く見かける黄色い看板が空き地に立っていた。

 かつては家族で来た思い出もある場所だった。

 約束したデニーズはその向かいに立っている。再び信号だった。ここを渡ればパピ子は冷房に当たれる。想像するだけで心が洗われるようだった。こんな夜は洗濯機にそのまま入ってしまいたい。

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