作戦

積田 夕

作戦


正輝は真ん中で割って2本にするソーダーアイスを、そのままくわえた。

美樹はその様子を、じっと見つめる。

2本の棒が刺さったアイスを一度に食べる様子は、なんだかおかしな感じがした。

美樹の視線を感じて、正輝は一旦アイスから唇を離す。


突然正輝は、アイスをふたつにパキンと割った。


「ほらよ」


「えっ」


「食いたいんだろ?じっと見てたじゃん」


『でもコレ、今くわえてたよね?』


先っちょが不自然に溶けたアイスを見つめる。


「遠慮すんなって、ほら」


美樹の戸惑いに気づかないのか、正輝はグイグイとアイスを勧めてくる。


「ったく、溶けちまうだろ?!」


「え、いいよ……」


「もう割っちまったんだよっ、ほら」


いつもながら、強引でマイペース。

受け取らない、という選択はなさそうね……。

美樹は小さくため息をついて、仕方なく受け取った。


ためらいながら、先っちょをかじりだす。

それを見て、フフッと笑いながら正輝は聞こえないほどの声で小さく呟いた。


「間接キス、成功……」

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作戦 積田 夕 @taro1999

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