第3話Separately 夫々

3.



 娘の美誠が3才、息子が生後半年の頃、会社のイベントで

バーベキューに参加した。


 毎回参加しているわけではなくて、この時は3回めの参加だった。



 子連れなので多少何度か話したことのある水谷あかねという女子社員

が子供を見てくれたり、料理の準備など私のサポートをしてくれた。



 彼女は既婚者で子供のいないDinksのキャリアウーマンだそうで

 このことは、以前参加した時に本人から直に聞いている。



 彼女は私より年上で、常識を持ち合わせた安心感のある人だ。

 話をしているとわかる。


 今回たまたま夫が娘を抱いて離れた場所へ行ったことで、この彼女と

ふたりきりになる時間があった。


 息子は上手い具合にバギーの中で寝ていた。



 私たちは野菜を次々に切って行く為にふたりで手分けして

野菜を洗った。


 その時彼女から次のような言葉を掛けられた。



 「由宇子さんも綺麗だからモテるでしょうけれど……」



 えーっ、お世辞合戦なの?



 お世辞合戦はきらい。

 思ってなくても相手のことをいろいろ持ち上げないといけなくなるから。


はっきりいって既婚者で子持ちになってまで、そういうのは

勘弁だなぁ~なんて、思った。



 だけどそうじゃなかった……そうじゃなかったのだ。

 話は私が想像だにしてなかったこと……だった。


3-2

 

 「ご主人の大倉さんもなかなかモテるみたい」



 「そうなんですか?」



 そっか、まだまだ夫……いけるんだ。

 ふ~ん。



「由宇子さん、ごめんなさい。

 もったいつけた言い方はもうやめますね。


 奥さんを不安にさせたり煽ったり面白半分で言うのじゃないことだけは

最初に言っておきますね。



 これから私がお話することはあまり愉快な内容じゃないんです。



 今回たまたま奥さんがイベントに参加されたこと……

しかも、私がなんとなく一緒に側でお手伝いするような役回りに

なったことで踏ん切りがつきました。



 そう言って彼女は話しを続けた。


 話すつもりはなかったようだけれど、事件簿が起きてから

そんなに日が過ぎてないことと、今日私が会社のイベントに参加したこと、

そして二人目も生まれたてたこと、(……ン? 意味不明)を知って

本当に迷ったが、話しておくべきかと思ったのだそうだ。



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