それでも、僕らは
@umitani
第1話 何者にもなれないキミへ
俺の名前は、アル。
何者でもない。俺のこの名前も自分のちゃんとした名前じゃない。自分で付けた。
記憶がない訳でもないし、多重人格というわけでもない。
俺には何もない。
何もないという表現もおかしいな、実際はいろいろ持っている。
今は、お金はあるし、五体満足だ。
病気も最近はしてないし、服もこの通り普通の旅人としては充分な服だ。
旅をする上で必要なものも一通り揃っているし、移動に一週間費やした今だって足りてないものはない。
水も食料も、着替えも、衣食には全く困ってない。
でも、俺にはなにもない。ただ生きているだけだ。共に笑いあう家族も、共に過ごす仲間も、共に目標を目指すライバルも、そもそも目標すらないし、趣味もない。
ただただ、旅をしてるだけだ。
目的がないわけではない。ただそこから得られるものは少ない。記憶としてすら蓄積されないかもしれない。
あ、ひとつあった。俺にもあるもの。
「自由になりたい」
いつか自分が渇望した信念。
自由になる為ならなんでもする。自由を妨げるものには抗う。自由を掴み取る。
でも今はある程度自由だし、かつてのそれは目標だったが、今は信念でしかない。
目標はない。
しいて言えば、いっしょに飯を食える仲間が欲しい。今までは一人で飯を食うことは当たり前で、なにも苦ではなかった。だが、旅をする中で、誰かと飯を食っている人たちを見ていると、おいしそうに食べている。
俺も、ああいういっしょに飯を食える仲間が欲しい。
そうだ、俺の目標にしよう。仲間を作って、いっしょに飯を食べる。当分の目標だ。
一年後になるか、五年後になるか、もしくは一生達成できないかもしれない、そんな目標だ。
俺は今、草むらに寝転がっている。
色々考えていたが、そろそろ時間のようだ。この街にきた目的を果たそうとしようか。
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