扉の先には

佐久間株貴

プロローグ


目が覚めるとそこは見知らぬ部屋だった。


「ここは?俺はたしか講義が終わって家に帰っていたはずだよな」


その日は講義が夕方に入ってしまい、帰る頃にはすっかり暗くなっていた。


「バスに乗って最寄りで降りたとこまでははっきり覚えている。そのあと俺は・・・バスから降りたあと俺はどうしたんだ。だめだ思い出せない」


とにかく状況を確認するために部屋を見回した。灰色のコンクリートの壁、バスケットコート二面はあると思われる広すぎる部屋。薄暗く部屋の中心付近には頼りない蛍光灯が一つ。窓は見当たらない。そしてそれだけ広いにもかかわらず何もない。


ただ一つの扉を除いて。


「何でこんなところに、誰かいないのか!」

精一杯叫んだが帰ってくるのは自分の声だけで期待した返事は帰ってこなかった。薄暗さと蛍光灯に照らされた壁が、恐怖を煽る。


「だめだ、こういう時こそ落ち着かないと。映画とかでもそうだ。そういえば携帯は?」

おもむろにズボンのポケットに手を突っ込んだ。


「よかったあった。とにかく警察に電話を」

急いで番号を入力して発信ボタンを押すが繋がらない。圏外だった。


「くそ!こんなときに限って圏外かよ!」

携帯があった安心感も束の間、恐怖と孤独感がまた襲ってくる。


「俺はこんなところで死ぬのか。最後にカツ丼食べたかったな。」

諦めかけていたとき、ふとあることを思い出した。


部屋に唯一ある扉の存在を。


「あそこから出られるんじゃないか」

そんな期待を胸に縺れる脚で扉にむかって走った。扉に手をかけ恐る恐る引いた。


そこにあったものは。

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