死んだ恋人と愛し合うことを誓えますか?
青キング(Aoking)
第1話
彼は仏壇に供え物をする彼女を、切ない気持ちで眺めていた。
黒漆な髪の毛、きめの細かい肌、しなやかな柳腰すべてがいとおしい。しかし彼は彼女に触れることができなかった。
仏壇に置かれている写真が、自分の慰霊という非情な現実があったから。
かけがえのない彼女との時間を、追い返すことなど不可能な死という悪魔が根こそぎ奪っていった。
仏壇がこの家に来たのは、まだ三日前のことだ。他人からした感覚なら三日なんて短い。
だが彼には三日は、どうにも長かった。
彼女に話し掛けることも触れることもできず、ただ彼女を見続けるだけというのは何とも切なくて、例えば高級レストランで食べたいもののイメージ図だけが出されることと何ら差異はない。
「あなた、仕事に行ってきますね」
彼女は仏壇に目をつぶり両手のひらをくっつけたあと、明るい声でそう言った。
そのまま靴に履き替え外に出て、玄関が閉まる音が無人の家に侘しく響いた。
いってらっしゃい、という日常あるはずの見送りの一言さえ彼は彼女に伝えることができない。
特別な幸福が欲しいわけではないのに、現実は無惨だ。神様は陰険だ。誰もが神様の下で、操り人形として操作されているだけだ。彼は神様という偶像を強く批判した。
ただその批判も、自身を慰めるための方便に過ぎないのだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます