体レンタルで働かなくても生きていける

ちびまるフォイ

すべては巨乳のために・・・

「体レンタルショップ……?」


なにげなくネットで見つけたサイトにアクセスする。

自分の体を貸し出してお金をもらえるらしい。


「へぇ、金がもらえるのか。ちょっとやってみよう」


超絶美人の彼女へのプレゼントのたしにでもなるかと、

まずは最安値の指をレンタルしてみた。


レンタル開始ボタンを押すと、俺の指1本が消えた。

サイトには俺の登録した指1本がレンタル商品として並ぶ。


「指1本なんていったい誰がレンタルするんだか……」


そんな俺の予想に反してレンタル先はすぐに見つかった。

IT業界で働くデスクワークの人で、指が1本あるだけで違うとか。


レンタル先の相手の情報も少しわかるの人助けしている気分になる。


「ま、指1本くらい大丈夫だろう」


レンタル期間は1日に設定した。

翌日、レンタル費用があっさり振り込まれていた。


「すごい! こんなに何もしてないのにお金もらえるのか!」


いままでバイトなどで小銭稼ぎを必死こいてやっていたが

それもこれからは必要なくなる。


体をレンタルすれば毎日寝ながらでも金を稼ぐことができる。


「よし!! 彼女のために金をかせぎまくるぞ!!」


来たる彼女とのデートの日。

高価なプレゼントを贈れば心も開いてくれるだろう。


美人でスタイルも抜群となればいいよる男も多いはず。

だからこそ、俺だけに振り向かせるために金が必要だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

指 ・・・1日500円(1本につき)

腕 ・・・1日1万円(1本につき)

足 ・・・1日5万円

鼻 ・・・1日3万円

目 ・・・1日10万円


※上半身、下半身のまとめレンタルも承っております。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「さて、どれを貸し出そうかな……」


手首だけとか、舌だけとかの細かいレンタルもできるらしい。

でも、一番高価なのは目だ。


「よし、一気にかせいでやるか!!」


俺は真っ暗な世界への準備をしっかり済ませた後に目を貸し出した。

一瞬で盲目の世界へとぶちこまれた。


でも、心の準備はできていたので思ったほど怖くない。


「ふふふ、どうせ仕事もしないで家で寝てるだけなんだ。

 目なんか見えなくても生活なんて余裕でできるぜ」


予想通り、目がなくなっても生活に支障は出なかった。

住み慣れた家では見えなくてもどこに何があるかくらいわかる。


あっという間にレンタル期間は終了した。


「ははは。余裕だったな。もっとレンタルしておけばよかった」


けれど、いつまでたっても目は戻ってこない。

この状況を理解して焦り始めるまで時間がかかった。


「まさか……延滞してやがるのか!?

 ふざけんな! デートは明日なんだぞ!

 目がなくちゃ彼女の巨乳も美人な顔もおがめないじゃないか!!」


とにかく目を取り戻さなくちゃならない。

視力2.0で彼女を舐めまわすように見るためにも。


音声検索でサイトから目をレンタルしてサイトへ問い合わせる。


「あの! 俺の目がレンタルされたまま期限過ぎても帰ってこないんですが!」


『かしこまりました。では来週に強制回収いたします』


「来週!? 何言ってんだ! 俺は明日の土曜日に必要なんだ!」


『でも、うちの会社は定休日で業者も休みなもので……』


「はあああ!? ふざけんな!!」


お役所仕事がこんなにも憎らしいと思ったことはない。

こうなったら自分の力で探し当てるしかない。


一流ハッカーの脳をレンタル ・・・1日10万円

一流芸能人の顔をレンタル  ・・・1日20万円


貯金を切り崩して、1日だけ超ハイスペックの頭を手に入れた。


「待ってろこのクソ野郎! ぜったい取り返してやる!」


ハッキング能力を駆使してすぐに延滞者の発進先を特定。

病院からアクセスしているみたいだ。


今度は芸能人の顔を使って、人脈と特権をフル活用。

ありとあらゆる交通手段を優先的に利用して病院へ急いだ。


「見つけたぞ! この延滞ドロボーめ!!」


病室に殴りこむと、病室に待っていたのはシワシワの老人だった。


「あなたは……?」


今にも死にそうな声と、知ってる苗字の親近感殻から

暴力的なまでに煮えたぎっていた怒りはすっと消火されてしまった。


「俺は……あんたに目を貸し出したやつだ。期限はとうに過ぎてるだろう?」


「ああ……そうですね……わかっています」


「あんた、どうしてレンタル期間過ぎても延滞してるんだ?」


「それは……」


老人は病室から見える窓の外を懐かしげに見つめた。


「私はもう先が長くありません。でも目は老眼と病気でもう見えない。

 ですから死ぬ前に一度だけくっきりと美しい世界を見たかったんです……」


「それで俺の目を……」


「でも、一度世界を見てしまったら、今度は手放すのが怖くなってしまった。

 あの濁ってぼやけた世界に戻りたくないと」


「……わかった。どうぞ、目を使ってくれ」


「え?」


「もちろん、延滞料金はしっかりもらう。

 でもあんたが死んだらちゃんと目は回収させてもらう」


「ああ、なんて優しい人だ……ありがとうございます。本当に……!」


こんな老人のささやかで最後の幸せを奪うことなんてできない。

目を別の人からレンタルすれば彼女の肢体を眺める分には事欠かないし。


「ところで、どうしてあんたみたいな高齢者がこのサイトを知ったんだ?

 見たところネットに詳しいってわけでもなさそうだし」


「孫がいるんです。いんたーねっとに詳しい孫がいましてね」


「ああ、なるほどね」


「孫は顔や体をレンタルしているものですから、

 私にも目をレンタルしてみたら、と提案してもらったんです。

 今では、あなたみたいに親切な人とめぐり合わせてくれた孫に感謝しています」


話をしていると、病室の扉がノックされた。


「おじいちゃん? お客さん?」


「ああ、ちょうどお前の話をしていたところだよ。入ってらっしゃい」


孫が病室に入ってきた。


「紹介します。私の孫の神田冴子です」



俺の彼女と同じ名前と苗字だったが信じないことにした。

だって俺の彼女はもっと美人で巨乳で…………。

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