第47話

鬼哭は、同じ声をあげた。


「でも泣いている場合じゃないだろうが」


「馬鹿ね。泣いているわけじゃないのよ。あれが普通なのよ」


「なるほど。鬼哭の名の由来は、これなんだな」


「ああ、めんどくせえ。さっさと終わるようだから、さっさと終わらせるぜ」


魁斗が走り、鬼哭に戦鎚を振り下ろした。


それに対して鬼哭は、金棒を振った。


まるで目の前のハエをはらうような動きだったが、ガンという大きな音とともに魁斗の身体が大きく吹っ飛んだ。


「いってえ」


魁斗は尻から落ちたが、素早く立ち上がった。


「この馬鹿。なにやってんのよ。一対一じゃ無理よ。ラスボスなんだから」


「ここには三人いるんだ。みんなでいっせいに飛び掛かろう」


「わかったぜ」


三人は三方に散った。


そして魁斗が正面から、紫苑と飛燕が右と左から同時に攻撃を仕掛けた。


鬼哭は空を見上げたままで、先ほど同じくハエをはらうような動作をした。


それだけなのにその一振りで、三人とも遠くまで弾き飛ばされた。


「いてえっつうの」


「いたいわね」


「いやはや、これはなんとも」


紫苑がスライムの時のように、指で鉄砲を撃つような仕草をした。


が、鬼哭は無反応だった。


ただそこに立っている。


「簡単に言うと、一割くらいの気をあいつにぶつけてみたけど、まるで効かなかったわ。ノーダメージよ。これじゃあ三人合わせて三十割の気をぶつけてとしても、結果は同じね」


「魁斗の戦鎚も紫苑のナイフも、私の槍も簡単に弾き飛ばされてしまうというのに、気も効果がないと言うのか」

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