第33話

魁斗が戦鎚を振り下ろす。


鎚はそいつにめりこんだが、ただそれだけだった。


魁斗が戦鎚を化け物からはなすと、鎚の当たった部分になんの変化もなかった。


魁斗が全力で叩きつけた戦鎚が、まるで効いていないのだ。


「えい!」


紫苑がナイフを突き立てた。


しかしナイフを抜くと、突き立てる前の状態に戻っていた。


「そいや!」


飛燕が槍を刺したが、同様の結果となった。


三人の武器が、まったく効果がないのだ。


「こいつ、なんなんだいったい」


「スライムよ」


「スライム? あのロールプレイングゲームで最初に出てくる、雑魚中の雑魚か」


「そう。多くのゲームでは雑魚中の雑魚として扱われているわ。でもあたいは前々からおかしいと思っていたのよ。ゼリー状の怪物は、斬っても殴ってもダメージを与えられないはずなの。そんなやつがレベル1で初期装備の、モンスター退治をたった今始めてみました、てなやつにやられるわけがないのよ。ずっとそう思っていたけど、それが正しかったことが今証明されたわ。目の前のこいつのおかげでね。こいつにはあたい達の武器がまるで通用しないんだから」


「でもこいつ、なんでさっきから動かねえんだ」


「あたいに言われても、そんなこと知らないわよ」


「それはそうと、こいつをいったいどうしようか」


「飛燕が食っちゃえばいいんじゃねえの」


「そんな無茶な」


三人がまるで緊張感のない会話を続けていると、巨大スライムが動いた。


右端にいた魁斗に襲い掛かったのだ。速い。


スライムも速いが、魁斗も速かった。


魁斗はすんでのところで横にかわした。


スライムはそのまま進み続けると、広場の端にある木にぶつかって止まった。

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