第8話

ここはまわりをぐるりと結界が張ってあり、普通は外から人が入ることが出来ず、グーグルアースで見ても見ることが出来ないと言うこと。


そしてこの地に住む人々は外界との接触を一切絶って自給自足の生活を送っていること。


そして一番重要なのが、その人々がある化け物を崇拝しているということだ。


「人がいるんですか?」


「いるわよ。この先に村があるわ。この先と言っても、ちょっと遠いけど。そいつらが化け物を崇めているのよ」


「人がですか?」


「そうよ。村全体で引きこもったやつらがね」


「化け物と言えば、さっき出てきた化け物はいったいなんなんですか?」


「元々ここいらは磁場というかそう言ったものがおかしくてね、それで門のようなものが出来たのよ」


「門……ですか」


「そうあっちの世界とのね」


「あっちの世界とは?」


「異界、魔界。呼び名はなんでもいいわ。私達がいるこの世界でない世界よ。そこに門が開き、一匹の化け物が現れた。今から八百年ほど前ね。その化け物をこの地の人達が奉りはじめた。もともとは動物とかを狩って生計をたてていた人々の村だったの。その当時、動物を狩ることはたいへん卑しい行為と考えられていたの。卑しいことだと考える人も、動物を食べるのにねえ。それでひどい差別を受けていたみたいね。そこへ強力な存在が現れたもんだから、救世主かなにかと勘違いしたのね。化け物もここの人はなぜか襲わなかったし。外へ出れば別だけど」


「外へ?」


「そう。そいつ、今ここに転がっている奴だけど、それが外に出て別の村を襲ったのね。結局名のある侍がかけつけて退治したんだけど、そのことで今まで以上に差別を受ける結果となったの。で、村人たちはそれに対する怒りのために、再び化け物を呼び寄せようとしたの。そしてなんだかんだで四百年後、今から四百年前ね、村人の四百年にわたる努力が実ったのかどうかは知らないけど、門が大きく開いて多くの化け物が外に出てしまった。そして大勢の人が亡くなったんだけど、将軍が軍隊を派遣して、たくさんの侍たちの犠牲によりその化け物をやっつけたの。そしてこの村にも攻め込もうとしたんだけど、化け物の親玉が結界を張って、誰も入れなくしてしまったのね。そしてここは完全に孤立。めでたしめでたしだったんだけど」


「だけど……どうしたんです?」


「あれから四百年、今になって門が再び大きく開くことがわかったの。あの門が四百年ごとに大きく開くようになっているのかどうかは、まだ調査中だけど。この結界は人間は入れないけど、化け物は簡単に出て行けるのよ。そうなったらどれだけの犠牲が出ることか。ここあたり一帯、血の海になるわね。そんなわけで私たち三人が派遣されたの。化け物の親玉をぶっ殺して来いってね」


清武は紫苑と飛燕を交互に見た後で言った。


「三人ですか?」


「ええ、三人よ。もう一人いるわ。ややこしいのが」

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