第3話


するとなにかがいた。


一見そいつは、犬、だった。


しかし明らかに、犬、ではなかった。


下半身は犬だが、上半身はほぼ人間だった。


犬の後ろ足と黒い毛で覆われた人間の手を持つもの。


そして顔は完全に犬だった。


そんなやつが二本足で立ってこちらを見ているのだ。


その身長は、清武よりも高かった。


――ひっ!


清武は逃げようとした。


しかしなぜか身体が思うように動かなかった。


見ればそいつは、すぐ目の前まで迫って来ている。


清武は思わず目をつぶった。


――……。


なにかが起こると思ったが、なにも起こらなかった。


「危なかったですね」


予想外の人の声。


目を開けるとそこには先ほどの陰陽師が立っていた。

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