第7話 レズでも生徒会長がしたい!

 先程と同じようにドアをバンッと勢いよく開けると思いきや、春咲は顔だけ出して教室の中を見渡す。


 上門がいるか確認してるんだろうなあ。


 当の上門は授業終了と共に何処かに消えて今はいない。


「上門はいないぞ」


「そ、そうですか」


 ホッと胸をを撫で下ろす春咲。


「来ましたよ!」


「何企んでるか知らないが俺は生徒会に入る気は無いからな」


「いいえ、先輩。先輩方は生徒会に入る気になりますよ。いえ、入りたくなるはずです」


 そう言って、取り出したのは、さっき何かいじっていたスマホだった。


 スマホを受け取り、画面を見ると去年の生徒会長からの返信メールが表示されていた。


「なになに。折乃生徒会長の文化祭を楽しみにしているよ。今年の文化祭は絶対に行くからね、だと!?まじかよ……」


 一ノ倉さんに助けを求めるが。


「残念だけど、そんな泣きそうな顔をしても助けることは出来ないわよ」


「いいえ、一ノ倉先輩。続きを読んでみてください」


 折乃が渡すスマホを恐る恐る手に取る一ノ倉。


 嫌な予感は的中していた。


「PS、一ノ倉も生徒会頑張って……!?」


 嘘でしょ!?と言わんばかりのリアクション。


 春咲を見ると、勝ち誇ったような顔をしている。


「お前、先輩を売ったな!?」


「買い取り先は大先輩なんで、いいんです」


 なんだ、その理屈は……。


「それに、安心してください!私は今年も生徒会選挙に立候補しますから!大船に乗った気でいてください!」


 ほとんど無い胸を張って言う春咲。


「「それはない」」


「即答!?そりゃあ、去年、庶務でしたけど……」


「落ち込み春咲ちゃん、はっけーん」


 上門の光った目はまさに、飢えた獣が獲物を見る目。


「いつの間に!?きゃっ」


 春咲は可愛い悲鳴を上げ、上門のレズホールドの餌食になる。


 一ノ倉さんにこのレズホールドをやろうとしているのを見かけたが、顔面に本を一撃もらっていた。相当痛かったのだろう、たまにしか仕掛けようとしない。


 しかし、こんな大胆に何度も女の子を襲って、皆は上門を"可愛いものが好きな、意外と女の子らしい一面を持つ人"と言うのだ。


 素晴らしい印象操作である。


 ちなみに、敷町がホモと知っているのはクラスの男子だけだ。


「そ、そういうことなんで、ちゃんと立候補するんですよ!」


 そう言って、なんとかレズホールドから抜けて、自分のクラスへ逃げていった。


「私も生徒会入ろうかしら」


「「「えっ?」」」


 ポツリと呟いた上門の一言にクラス皆が反応する。


 俺と一ノ倉さんの「えっ」は面倒なことになりそうの「えっ」だが、クラスメイトの「えっ」は大体予想がつく。


「上門さんが生徒会に立候補するなら私、宣伝とか頑張るよ!」


「俺も!」


 やっぱりだ。


「僕も一肌脱ぐよ!」


 そう言って、田中君は上着を華麗に脱ぎ捨てる。


「お前はマスコットキャラクターにでもなるつもりか!?」


 と、敷町がそう言うと、クラスが笑いに包まれる。


「本気で生徒会に入る気なの?」


「皆、応援してくれるみたいだし、決めたわ!私、立候補する。もちろん、生徒会長に!」


 突然の挑戦状。


「嘘だろ……」


 汗が頬を伝う。


「勝負よ、折乃優人!!」


 ーーこうして、俺と彼女の初めての戦争が始まった。

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