04-09-03:ドッペルゲンガー抹殺依頼
ハーブ・ドッペルの訴えにシオンとステラは顔を見合わせた。
『シオン君は"非実体"を切れるかい? つまるところ〈スパーダ〉についてなんだけど』
『出来なくはないですが……』
シオンが言うように、ハーブ・ドッペルが
ステラもそれを予想したのだが、色良い返事ではない。
『話を聞く限り意味はあるんでしょうか?』
『どういう事だ?』
『仮に倒したとして、それで彼は"終わり"なのか……僕はそこが疑問です』
話を聞くにステラの眉根が寄っていく。
『……なるほど。メディエちゃんが原因でハーブ君が居るとすれば、メディエちゃんがいる限り復活するってことか』
『おそらくは。しかも、繰り返すごと良くない結果になると予想します』
『それは?』
『ハーブさん、貴方はメディエ嬢の魔力を基底に残り滓から生まれたと言いましたね。
今ここで霧散したとして、次に集まる量は同じですか?』
『間違いなくうすくなるのは間違いないデス。今の状態ですら、ハーブ・フローラ・ティンダーとして思い出せない記憶が多いデスからね』
『そりゃまずい……下手すると倒すごと本能側に傾倒する可能性があるな』
『そうなります。因みに……ハーブさん、この状態は何時まで保つんですか?』
『僕は僕として自我を持っている点を鑑みても、そうデスねぇ……収穫祭が終わる頃には完全に奪いに行くとおもうんデスよ』
『『うわあ』』
お祭り騒ぎが本当にお祭り騒ぎになってしまう。何より『倒す』のが根本解決にならないというのがいやらしい。
(発生原理から考えるに、今ここにいる彼を小生が隔離しても新しいのが生まれるだけだな)
その場合倒したケースよりもっと悪い事態となるだろう。なにせ基底となる残滓がないのだ。メディエが即時襲われる可能性が非常に高い。
『つまり……今我々が抱えている問題には時間制限があるのだな?
メディエ嬢は今以て非常に危険な状態にさらされている』
『の、ようですね……どうしましょう?』
唸るシオンにステラが眉根を寄せる。
『案がないわけじゃあないんだが、荒治療しか思いつかないんだよね』
『……ちなみにどのような案ですか?』
『状況再現によるIFの展開だ。つまり似た環境にメディエちゃんを追い込んで、刺さなかった可能性を経験させる。できなかった経験を上書きするわけだな』
『それ、失敗したら……』
『確実に悪化するねぇ、はっはっは』
笑うステラを睨むが、シオンに対案がないのも事実だ。
『だが運が良い点が2つもあるぞ?』
『なんです?』
『1つはどの道時間がないこと。ここで失敗しても時間が短くなるだけってことだ』
『母様と一緒、ということですか……もう1つは?』
『彼の存在だよ』
手をひらりとハーブ・ドッペルへと向ける。
『わざわざメディエちゃんの為に来てくれるぐらいだ、手伝いを頼まれちゃあくれないか?』
『構いませんが、何をすればいいんデス? 僕は猫のお陰で来られただけで、出来ることは限られているんデスが』
『なら猫君の協力が必要だな』
目線を向けられた猫は不機嫌そうに尻尾を揺らす。頭上のハーブの存在が相当嫌なようだ。ぷいっと顔を背けてぐるると喉を慣らしている。
『ねこくんねこくん、どうか手伝ってくれないか?』
『やだ』
『むぅ、どうしてもかい? おいしいごはんあげちゃうよ?』
『やだー!』
しかし興味を示したのか耳はピクリと動いてくれた。もうひと押し、といったところか。
『今なら一日もふもふ権もつけるよ?』
『もふもふけん』
『なななーんと、小生と1日あそべます!』
ここでようやくステラと目が合った。
『……ひざにすわってもいい?』
『ええぞ!!』
これにぴこぴこと耳が動く。尻尾もぴぃんと立って機嫌を直したようだ。
『やくそくだよ』
『約束だとも』
すると猫は仕方ないなぁとばかりにふんすと鼻を鳴らした。交渉成立である。
『では具体的なプランを話すとしよう。で、明日朝イチでサビオさんに連携だ』
『あー、渋られるんだろうなぁ……』
苦い顔をするシオンがふぅとため息をついた。
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