LUCaの二重螺旋
狗島 いつき
プロローグ
人類には、破滅が刻まれていた。
A.D.3129年。
科学は全人類共通細胞であるヒトゲノムの解明を終わらせていた。
その成果として人類が手に入れたモノとは、死の概念を失うことだった。
病気や事故で失う細胞や、寿命で消滅する細胞ですらクローンで全てを補うことが可能となったのだ。
自身と他者を失う失望から解放された人類は、爆発的な勢いで増加の一途を辿る。
そのため、それを支える食料やエネルギーバランスを失い、貧しい国の人々は生命活動の維持すら困難となり始めた。そしてそれは、全世界へと広まっていく。
悲しみという感情を無くした人類の代償は、栄養失調という余りにも残酷な不幸をもたらした。
それでも生き残りたい人類は、神をも引きずり降ろす行為に手を伸ばした。
禁断とも言える遺伝子組換技術によって、消費しない細胞へと体の遺伝子構造を組換えたのだ。
全てを凌駕し、神をも凌いだ人類は、今度こそ本当の幸せを手に入れたかのように思われた。
しかし、所詮人が作りしモノ。人である以上、人の領域から出るコトはなかった。
全生物最終共通祖先(LUCa)のDNAには、破滅のプログラムが刻まれていた。
生物としてのDNAを持つ限りその呪縛から逃れることが出来ないと確信した人類は、呆気なくそれを放棄し、DNAを持たない電子の世界を選んだ。
人がDNA構造を始めて発見したA.D.1953年から約1600年後の人体には、DNAの欠片すら残されていなかった。
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