第8話 4月28日 連休前
4月28日(木)
「よっしゃー! 明日から連休だぜー!」
今村くんは部活が終わるとそう言って伸びをする。
昭和の日、土曜、日曜と3連休を満喫するつもりらしい。
その後も、月曜は授業があるものの火曜~木曜までゴールデンウィークである。
「月曜が休みなら、7連休だったのにね」
私が何気なくそう言うと、今村くんが悪い顔をする。
「じゃあ、俺、月曜はサボるから」
そして、そんなことを言ってのける。個人的には別に休んでもいいと思うのだが、教師である私の前で言わなくても。
そこでふと、今村くんの成績のことを思い出す。
私の授業はそんなことはないが、聞いたところでは授業態度が悪く全然勉強していないらしい。
「そんなこと言わないで、学校来ようね。というか、授業はちゃんと聞くように」
そう言ってみると、今村くんは私をにらみつける。
「あんたに関係ねーだろっ」
「関係なくないよ。ゴールデンウィークが終わればすぐに中間テストだし。赤点取られても困るし」
今村くんの言葉に、本気で私は困ってしまう。
「赤点取ったって、追試を合格すれば良いだけだろ」
私が困っていることには気づかず、今村くんはそう言ってのける。
「そういう問題じゃないよ。追試の前に補習もあるし。何より追試じゃ内申が悪くなっちゃうこともあるんだから」
私の言葉に、今村くんは慌てて立ち上がる。
「補習? そんなの無理無理。土日は俺は用事があるんだから!」
そう言って、今村くんは私に詰め寄ってくる。
「いや、私に言われても。じゃあ、補習を受けなくてすむようにちゃんと勉強するんだね」
そう言うと、今村くんは下を向いてしまう。
「んなこと言っても……。最近は授業の内容がさっぱりわかんねーんだよ……」
今村くんがぼそっと呟く。うちの学校では最初のうちは中学で習った内容を復習するようにしているんだけどなー。
その辺の授業を聞いていなければ、高校の内容に入ってきてさっぱりわからなくなるという可能性は十分にあるかもしれない。
困った。授業を聞いているかどうかまでは、教師側ではどうしようもないしなぁ……。
「土日は用事がある……と言うことは、ゴールデンウィークなら用事はない?」
「へ? まあ、今のところは遊びに行く予定は立ててないけど」
私の言葉に、今村くんは何のことだとばかりにぶっきらぼうに答える。
「じゃあ、ゴールデンウィークに一緒に勉強しようか」
「な、なんでだよっ」
私の言葉に今村くんが慌てる。
「悪いけれど、今のままだと赤点の可能性が非常に高い。ゴールデンウィーク中に授業に追いつけるように勉強しよう」
私の言葉に、今村くんは嫌な顔をする。
「なんで、ゴールデンウィークにまで勉強しなくちゃならねーんだ」
「授業中に真面目に授業を受けてなかったんだから、仕方ないね」
今村くんの言葉に、あっさりと答えてやる。
「ふざけんなよ……。でも、授業についていけてないのは確かだし……」
今村くんは頭を抱えて悩みだす。
「一度、授業に追いついてしまえば、後は普通に授業を受けてれば付いていけるはずだよ」
私の言葉に、遂に今村くんが折れる。
「わかったよ。ゴールデンウィークに補習すればいいんだろ。その代わり、わかりやすく教えろよなっ」
今村くんはそう捨て台詞を残して、部室を出て行った。う~ん、素直じゃないなぁ……。
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