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―現在―
「本当、俺がバカだったんだよ」
うっすらと涙を浮かべながら彼は苦笑した。
今の今まで生きていること自体、不思議だと笑いながらすっかり青空の広がった空を見上げ続ける。
「いつもどおりの笑顔ってことは表情が変わったことないってことだったんだよ」
彼女の喜怒哀楽を見たことがないことに、要求が増えていたことに気付かなかったことに彼は自身で呆れていた。
「親が心配した本当の意味に気付かなかったんだ」
知り合いの中でしか話したことがなかった彼には疑うという力、考えるという力が足りなかった。
「まさかこんな結末で分かるなんて、親に申し訳ないな」
両親も後悔してしまうんだろうな。
そう言ってゆっくりと目を閉じようとする彼の顔を少女が再び覗き込んだ。
更に澄みきり、まるで宇宙のような瞳が輝いて彼を見下ろしている。
その瞳を見つめながら彼は満足そうに眠りについた。
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