1-3

「何してるの?」


彼の質問には答えずに少女はもう一度、彼に尋ねた。


誰も通らず誰にも気づかれない路地はまるで二人だけの世界のようだ。


自分で考えたことを馬鹿らしく思ったのか、彼はふっと小さく笑った。


「俺がバカだったんだよ」


日がどんどんと昇っていく。


少女の方を見ることもなく、彼はぼんやりと空を見上げた格好のまま口を開いた。


「昨日はクリスマスだったんだ」


君はお家の人と過ごした?


彼の質問に答えることのない少女。


彼自身も少女が答えると思っていないのか、独り言のように話し続ける。


「付き合って半年になる彼女がいたんだ」


それは素敵な人だったんだと彼は目を細めて微笑んだ。


今の彼の目の前にはその女性がいるのかと思うほどに優しい笑みだった。

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