カイキカイダン

逢坂一加

0.招待状

拝啓

 紫陽花が雨に生える季節となりました。お元気でいらっしゃいますか?

 あなたの華々しいご活躍は、辺鄙なこの地にも届いてきます。

 すっかり有名人になってしまったあなたと同じ学び舎にいたなんて、ときどき、夢のような気になります。

 卒業後、すっかりご無沙汰していたのに、急にこのようなお手紙を送ったこと、どうかお許しください。

 実は、運営していた薔薇園を閉鎖することになりました。携帯電話が圏外になってしまうような、交通の便の悪い場所ではありますが、その分、気候と土に恵まれ、素晴らしい薔薇が咲き誇っていました。決して少なくはない常連の方々にご利用いただいたにもかかわらず、閉鎖せざるを得ないことは、心苦しくあります。

 ただ、僕にとって、懐かしくも輝かしい時期を過ごした、星歌男子高校の演劇部の方々と共に、薔薇園で最後の観賞ができれば、と思った次第です。

 宿泊施設、及び食事のご用意はこちらで負担いたします。あの頃の思い出や、当園の感想、参加者の方々のご近況などの積もる話を、夜通し語り明かしたく存じます。

 実に身勝手なお願いではありますが、ご都合がよろしければ、期日に別紙住所へお越しください。



 敬具

 天羽恵夢

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