膝上15センチの恋
胡蝶
膝上15センチの恋
4月
4月。
新しい制服に着替えた私は、全身が移る姿見の前でくるりと回った。チェックのスカートがふわりと広がる。普段はサラサラのストレートだけど、今日は軽く巻いて垂らした髪型。同じクラスだった
受験の時にお母さんが京都の私学も受けるように言われて制服が可愛いだけで受けた学校。
都内の学校が第一志望だったけど、この春から父が京都に転勤するかもしれないからということで、力試しもかねて受験したのだ。
そして、、、4月から私は京都で暮らすことになった。しかも一人暮らしなのだ。
父の転勤が決まったけど移動は9月からということになったらしい。引っ越しは夏に延期され、母と探した一人暮らし用のアパートに住むことになった。母は引っ越しの準備と、何もできない父のお世話でしばらくは行ったり来たり。
私は大丈夫よと言っているのに、全く信用していないみたい。いつまでも子ども扱いして。
もう一度鏡に映った自分を見る。まじめな中学時代を過ごして来たけど高校デビューを果たすため、今まで纏めてくくっていた髪を解き、葵に教えてもらったように巻いてみたけど、慣れてないせいかまだうまくいかない。準備を終えて誰もいない部屋に行ってきますと言いながらカギを閉めて歩き出す。
初めての一人暮らし。新しい学生生活。期待するなっていうほうが無理。足取りは軽い。
学校まで歩いて15分の距離の所に、奇麗な桜の木がある。金曜日にお母さんと入学式に向かったときはまだ咲はじめだったけど、今日は満開になっている。春の風に乗って桜の花びらが舞い散っている。この木の下でかっこいい男の子とぶつかって、しかも同じクラスの隣の席だったみたいな事を妄想するのも春のせいよね。
そんな偶然は残念ながらなかったけど。
学校に着くとクラス分けの張り紙があり、自分の名前を探す。
C組の教室に入ったけどまだ挨拶を交わす知り合いがいない。これから友達も、もしかしたら彼氏もできるかもしれない期待に胸を膨らませながら、男女が一列づつ交互に、五十音順に並んでいる席表で確認した席に着いた。前の席に座っている子が振り向いて、「おはよう、私は前橋咲良」と話しかけてきた。びっくりしてどもってしまう「お、おはよう。私は み、宮下芽衣」「芽衣ちゃん、よろしくね」とにっこり笑った。だって、咲良ちゃんすっごく可愛い。こんな子に話しかけられたら誰だってどもっちゃうわよ。読モに載ってるみたいな子。なんだか学生生活がたのしくなる予感がしてウキウキしてきた。
ホームルームが終わって今日は午前中で終わり。帰ってから夕ご飯の買い物をして、春物の可愛い服の下見に行こうかと思っていたら、咲良ちゃんが「ねぇ、芽衣ちゃん。今日暇だったらカラオケ行かない?」と誘ってくれた。中学の時は葵がたまに誘ってくれてたけど、葵の友達は派手な子が多かったせいか、なじめなくてあまり行かなかったけど、、、「沙良ちゃんと二人で?」と聞いてみると「私と同中のA組にいるミチルって友達と一緒でもいい?」言った。高校で、誰も知らない場所で友達を増やすチャンスだよね。思い切って行ってみよう。
「うん、行く。紹介してね」
「じゃぁ、学校からこのまま一緒に行く?」
「いいよ」
「じゃぁ、ミチルの教室に行って三人で行こっか」
話がまとまり、カバンをもって沙良ちゃんに続いて教室を出ていく。来るときは一人だったけど、帰る時には二人になった。後ろから沙良ちゃんを見ると短く詰めたスカートから奇麗な足が見える。可愛いだけじゃなくってスタイルもいいんだ。でもこんな短いスカートだと、階段で後ろから見えそう。私より15センチは短いかも。A組に入っていくと、男子の視線が沙良に集まっている。そりゃこんだけ可愛けりゃね。分かるよその気持ち。男子がひそひそ言っているのが分かる。沙良ちゃんは全く気にせずに教室を見回して、「ミチル」と声をかけた。声をかけた方向に一斉に視線が動いてる。その先にいるのは、私が想像していた沙良ちゃんみたいなかわいい子ではなくて、ちょーーー絶イケメンの男子だった。
「おー、沙良。じゃぁ行こうか」そういってこちらに歩いてきた。今度は女子の視線が痛い。何、あの子。彼女かな?せっかく目をつけたのにっていう声が聞こえてきそう。
沙良ちゃんが私に向かって「いこう芽衣ちゃん」といって、教室の雰囲気を引き付けまくった二人と一緒に、廊下に出た。
廊下を歩き名がら、沙良ちゃんは「同じクラスの芽衣ちゃん。新しい友達」と紹介してくれた。「俺、神崎美知留っす。よろしく」と手を差し出した。すかさず沙良ちゃんが「だめ、芽衣ちゃんに触っちゃ」と私を抱きしめた。沙良ちゃんにドキドキしてしまう私。顔が熱い。
ミチル君は「なんだよそれ」と笑った。このイケメンは名前も笑顔もサマになる。
「でも、高校に入ったら友達欲しいって言ってたから良かったな。芽衣ちゃん、沙良をよろしく。こいつ友達すくねえから」
「もう。いいから、行くよ。カラオケ」そういって少し顔を赤くして先に歩き出した。きっと沙良ちゃんの彼氏だろうな。すごくお似合い。なんだかリラックスして私達も歩き出した。
カラオケで沙良ちゃんを挟んで並んで座った。ミチル君のアニソンに沙良ちゃんも続いたので、私もアニソンを歌った。三人でアニソン祭りになってすごく盛り上がってしまった。「引っ越してからこんなに笑ったのって初めて。一人だし」というと、「え、一人暮らしなの?」と聞いてきた。かいつまんで事情を説明すると「じゃあ今日は時間気にしなくていいよね。ガンガンあそぼ。芽衣ちゃん、お酒飲める?」
葵の家で酎ハイ飲んだことがあるけど体がカーッと熱くなって、一本で真っ赤になったことがある。「強くないけど」というと「じゃあ飲んじゃおうか」とインターホンでお酒を注文した。ミチル君が「俺ちょっとトイレ」と席を立った後姿を沙良ちゃんが眺めているのを見て、沙良ちゃんに「ねぇ、沙良ちゃんとミチル君って付き合ってるの」と聞いてみた。沙良ちゃんが含んだ笑いをしながら「そのうち教えてあげる」と言った。どういうことなのか分からなくて??となっているところに店員さんがお酒をもってやってきた。扉を開けるなり「お前ら、制服着たままで酒頼んでると補導されっぞ」と言われた。私はドキッとした。
すると後ろからミチル君が「だからここに来たんだよ、兄貴」と入ってきた。
私一人、えっ?みたいになってるとミチル君が「これ、俺の兄貴。俊矢」といった。ネームプレートを見ると神崎って書いてある。お兄さんとミチル君はあんまり似ていなくて、穏やかで優しそうな雰囲気。身長はミチル君より低いし、あどけない美少年て感じ。沙良ちゃんに「沙良。お前どっかで飲んできたの?」といったので沙良ちゃんを見るとなんと顔が耳たぶまで真っ赤。「そ、そんなわけないでしょ。熱唱しすぎただけよ」と横を向いた。
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