6月5日(月)研究所内で野菜を栽培する吾妻さん
月曜日はいつもだるい。
今日は見学も取材も入っていないから、一日じゅうデスクワークだった。
ということは、あのジャングル臭を一日じゅう嗅ぎ続けることになる。
その予防策として、昨日ジムの帰りにレモングラスのアロマミストと使い捨てマスクを購入。
出勤後にロッカールームでマスクにアロマミストをかけ、装着して企画課に入った。
けど――
あえなく撃沈。
マスクの隙間から入ってくるジャングル臭は防げなかったばかりか、レモングラスの香りがジャングル臭と相まってドクダミの生い茂る草いきれのような息苦しさを覚える。
「大丈夫?顔色悪いよ?」と向かいの席のゴリエスト(最上級)に心配され、(お前のせいだよ!)と心の中でつっこんだ。
午後に課長から大規模転移実験施設へおつかいを頼まれて、助かったとばかりに本棟から飛び出した。
本物の緑の爽やかな香りを胸いっぱいに吸い込みたくて、おつかいの帰りに遠回りして敷地内の雑木林の手前を通った。
すると、雑木林の中から、異世界特殊成分分析チーム長の吾妻さんというおじさんがいつもの農作業のような恰好で現れた。
吾妻チーム長は研究所の敷地が広いのをいいことに、誰も来ないような空いている土地をこっそり畑にして野菜を作ったり、雑木林の中でしいたけを栽培したりしてるんだ。
私はおつかいや見学案内で研究所内を歩き回ることが多いから、チーム長から時々収穫した野菜をお裾分けしてもらったりしている。
「この時期にきのこが採れるんですか?」と尋ねたら、いつもどおり聞き取りにくい茨城弁で「これは異世界のきのこだっぺよ」と、両手に抱えたかごの中を見せてくれた。
中を覗くと、毒々しい赤色をした不思議な形のきのこがいっぱい入っていた。
なんでも、以前異世界の空気を採取した時に含まれていたキノコ菌を培養し、試しにしいたけと同じ要領で栽培してみたところ、最近収穫できるようになったとのこと。
「ちっと辛ぇけどよ、天ぷらや味噌汁に
チーム長はちょっと残念そうに「これ食ってっと、指の先っちょからライターくらいの炎が出せるようになって便利だぞ」って言ってた。
それ、こっちの世界の人間が食べたらヤバイやつじゃないのかなぁ!?
吾妻チーム長の体の変化が心配だよ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます